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連載近田春夫の考えるヒット

LUNA SEAの5人が集まる理由が新曲を聞いてわかった気がした――近田春夫の考えるヒット

2019/06/26

『宇宙の詩~Higher and Higher~』(LUNA SEA)/『HELP』(flumpool)

絵=安斎 肇

 河村隆一のソロ名義の作品には何か不思議な魅力がある、といったようなことは、かつて私もこの欄で書いた記憶があるが、一旦解散ののち活動を再開した“バンド”の方の音に関しては、そういえばちゃんと聴いてこなかったかも。

 そんな訳で、今回久しぶりに味わうLUNA SEAのシングルなのだが、いくつか感じたこともあったので、素朴に感想を述べていきたいと思う。

 その骨子となるのは、河村隆一をはじめ、それぞれのメンバーにとってこのグループとは何なのか? ということである。精神的な部分もあれば、純粋に音のこともある。

 そこで、まずどんな作りになっているのか聴いていくと、ジャンル的にはどうやら“プログレッシブロック”に属するもののようである。

宇宙の詩~Higher and Higher~/LUNA SEA(ユニバーサルJ)89年結成。初の外部プロデューサーとの共同プロデュース楽曲。

 それは、壮大なイメージを印象づける働きを持つコードの展開に、今日ならでは可能な技術的効果/装飾を施して、まさしく“スペイシー”或いは“トランシー”と形容するに相応しい幻想的空間を、終始聴き手の脳内に現出させることにこのトラックが成功しているからで、そうした――舞台装置としての――音響を従え、例のお馴染み河村隆一ならではの歌声が、文字通り“縦横無尽”に表現してみせる、その「世界」の完成度の高さには、誰もが納得させられるだろう。

 果たして、ライブステージで再現出来るのかどうかはこの際置くとして、この“音”を聴いていてアタマに浮かぶのは、メンバー五人がスタジオかどこかでレコーディングしている風景だ。「この人たちはこれを作っているとき、きっと幸せだったのだろうなぁ」と。漠然とではあるが、何かそんな感じの絵が見えてくる(あくまで主観の産物ではあるが)ミックスなのだ。

 バンドの録音物を聴いての楽しみのひとつはといえば、メンバー間での仲の良さや悪さのようなものの伝わって来るときのあることだ。こればかりはソロでは味わえない。

 といって、バンドだったらば必ずや演者の表情や体温が音から感じられるわけでもない。そのあたりの事情というか、jpop的な括りでいうところのロックバンドには、残念ながら、別にこのメンバーでやる必要ないじゃんさ、いい換えるのなら、誰が楽器を弾こうと一緒といいたくなるような、単なる歌手とバックミュージシャンの関係の域を超えぬものも――聴いてきたかぎりでは――結構ある、ということは先週に書いた通り。

 そのような意味でも『宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~』は、この五人が揃わなくては、決してカタチにはならなかったであろう個性あふれる仕上がりで、すなわちLUNA SEAというバンドにしか出せぬ音とは何なのか、彼等はそれをよく知っているからこそ、結局こうして集まっては録音をしたくなるのだろうなと、俺はそう思った次第なのだった。

HELP/flumpool(アミューズソフト)活動再開1枚め。ボーカルの山村隆太の発声障害治療中の葛藤を綴ったものという。

 flumpool。

 よく、こういう曲って、アニメのエンディングにあるよね。これもそうなのかな?

今週の発見「オレ、出歩く時って基本手ぶらなんだよね。財布ぐらいはポケットに入れているけど、両手には何も持ちたくないの。最近、渋谷の町を歩いていて気がついたけど、いま日本人って、カバンなりリュックなり、9割9分9厘、なにか荷物を持っているよね」と近田春夫氏。「昔はもう少し手ぶらの人っていたと思うけどなぁ。オレのオヤジとか!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。