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LINEやメールを何度も送るのはストーカーですか?――ストーカー相談室

『ストーカーとの七〇〇日戦争』内澤旬子×小早川明子対談

 ストーカーとはなんなのか、誰がなってしまうのか、被害に遭ったときどうすればいいのか――被害者の立場から迫真のルポを書いた作家とカウンセラーがストーカーにまつわる疑問に答え、実践的な対策を語り合った。

著者の内澤旬子氏(左)とカウンセラーの小早川明子氏

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内澤 週刊文春で連載していたルポが『ストーカーとの七〇〇日戦争』という本にまとまりました。連載中からしんどい思いをして書いて参りましたが、本にするのにも苦労しました。ストーカー事件の関係者のカウンセリングをしておられる小早川先生には、ストーカーとの向き合い方についていろんなアドバイスをいただきました。あらためて感謝します。ありがとうございました。

小早川 出来上がった本を拝見して、あらためてすごいなと感服です。率直によくここまで書けたなと。自分のことをあけすけに書く難しさ、実際の被害について配慮しつつ書くという困難もある。内澤さんの強い精神力がこの本の根底にあるのは間違いないですよね。

内澤 ありがとうございます。こんなにたくさん付箋をつけてチェックしてくださって……。恐縮してしまいます。

小早川 作品としての面白さもそうですけど、なによりこれは世の中にとってとても貴重なルポですよね。被害者がこんな思いをしてこんな壁にぶち当たっていたんだ、とあらためて気付かされることも多かった。たとえば司法手続きの中でどういう苦労があるのかがとても良くわかります。これから私のところに相談に来るひとたちにも、この本を読めばだいたいわかるよ、とアドバイスできるので、助かります。

内澤 うれしいです。書き上げて今思うのは、これでようやく事件のことを忘れることができるということ。ストーカーのことを書くと決めてから、ありとあらゆるディテールを記録して記憶しておかなきゃいけなかったのはつらかったですね。でも、これはどんな被害者の方にもある辛さだと思うんです。世間のニュースだと、「逮捕されました」「裁判があって判決は○○です」でおしまいなんですけど、事件の当事者はそう簡単にはいかない。被害者は加害者が逮捕されるまで気が気じゃないし、刑務所に入っても出てきたあとのことがすごく心配になってしまう。被害に遭ったその時から、周囲の人間関係、自分の精神状態など、解決する見込みのない差し障りがたくさん出てくるんです。そんな中で先生と出会って、加害者の治療のことを知りました。

小早川 内澤さんもその答えにたどり着いてくれたことがありがたいです。ストーカーを20年見てきて、加害者の治療・無害化が被害者にとっても世の中にとっても大事だと訴え続けていますが、なかなか理解されないまま今に至っています。

内澤 それが理解されないのが本当に不思議です。実際に被害に遭った私としては、なにをもって解決とするかと考えれば、常軌を逸した、話の通じなくなってしまった加害者には、もはや治療して過剰な執着をとっていただくしかないだろうと自然に思い至ったんですけど。

小早川 現に被害に遭っている人の多くはそういう思考回路をたどるんです。でも周囲の支援する人たちにとっては、厳罰こそが被害者の心の傷を癒やし、被害の補償につながると思われることが多いですし、世の中もそう確信しているように感じます。被害者自身と周囲の認識のズレもこの本には描かれていますね。

内澤 この機会に、本の中では書ききれなかった、ストーカーとの向き合い方、対策について小早川先生から色々アドバイスをいただければと思っています。