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連載近田春夫の考えるヒット

素人が歌うのは無理 エビ中新曲の見事さ――近田春夫の考えるヒット

2019/06/28

『トレンディガール』(私立恵比寿中学)/『君に届くまで』(Little Glee Monster)

絵=安斎肇

『トレンディガール』のタイトル名を見て思ったのが、やはり「狙ってつけているんだろうなぁ」ということである。というのもコレ、なんか語彙とかわざわざ中途半端にレトロ漂わせてないすかね? といいつつ、ではどこがそうなのかと問われると、説得力のある答えを見つけるのもなかなか骨なのだが……。いずれにせよ、今の時代の若い女の子たちが歌う曲にこのタイトルとは、一体如何な内容/歌詞なのか? はたまたサウンドはどうなっているのか、色々と気にかかってしまうではないか。ついつい聴いてもみたくなるてぇ“寸法”だ。

 要するに、そのあたり含め、戦略よね? という話である。

 詞曲アレンジともに川谷絵音の仕事だが、その、アタックの効いた弦楽器による2小節リフの繰り返しからなるイントロが、妙に耳に残る。ふとDestiny's Childの『Bills, Bills, Bills』を思い出したぐらいだから、jpopのシングルとしては異色といっていい始まり方だろう。

 曲全体も、イントロに負けず劣らず強気な作りだ。アイドルものとはいえ、土台となるヒップホップビートのドラムは、トリッキーと呼べるほど(はちとオーバーか)緻密にディテールのプログラミングがなされているし、一度聴いた程度ではコードネームをササッと挙げていくのも難しい、凝った和声の展開が続く。

 そんな、いわばどうしても“構造に目のいってしまう”トラックに絡むメロディだが、これまた同じ要領にてよく練られていて、非常に数学的というか、隅から隅まで――いくら際どい複雑な動きをみせようとも――不合理/辻褄の合わぬ部分などの一切見出せぬのは、見事なものである。

トレンディガール/私立恵比寿中学(SONY)結成10周年でメンバーも20歳前後に。本曲で13枚目。作詞作曲編曲は川谷絵音。

 どこまでも説明のつく“理性の産物”とはいささか意地悪な説明かも知れないが、歌い手にしてみれば面倒なのは――述べた意味合いに於いて――ここでは、歌唱にも作曲に見合ったレベルの能力/知識が求められる、すなわち楽典的解釈での曖昧さなど許されぬ。そうでなければ録音のかなわぬことだ。今回の私立恵比寿中学新曲の一番の注目といえば、そうしたプロデューサーのオーダーに、メンバーがいとも易々と応えてみせている点なのだと私は思った。

 結果、実は誰もが簡単に歌いこなしたり出来るシロモノではないにもかかわらずこの楽曲、そうとは人に気づかせぬ、耳心地のよい軽い仕上がりとなった、ということである。そこから飛躍し過ぎるかもだが、こういうのが流行したりするんだったらば「カラオケ文化の衰退」はホントなのかも知れねーなぁ……と、そう俺は類推した。いやマジ、これ素人が完コピして歌うのとか、よっぽどじゃないと無理無理!っすからね(笑)。

 そうだ。録音ではなく彼女たちがこれをライブでどうこなしているのか? そこはちょっと見てみたいかなぁ?

君に届くまで/Little Glee Monster(SONY)女子中高生に人気のユニット。作詞はいしわたり淳治、作曲はいきものがかりの水野良樹。

 Little Glee Monster。

 声も音楽も、アイドル楽曲として文句のつけようもないが、新鮮味はイマイチかもね。

今週の違いのわかる男「実は北海道のお米にあまり期待していなかったんだけど、最近勧められてゆめぴりかを食べたら、すごく美味しくてびっくりしたよ。長細く小さめの米粒は、食感が華奢な感じで女子好きする高級感があるんだよ。おかずに合うと感じたね」と近田春夫氏。「近頃のお米はどれもコシヒカリっぽい味じゃん。これははっきり違ったよ」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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出典元

大阪拳銃強奪犯<飯森裕次郎>エリート父への愛憎30年

2019年6月27日号

2019年6月20日 発売

定価420円(税込)

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