「サマーウォーズ」「時をかける少女」などで知られる日本テレビ子会社のアニメ制作会社「マッドハウス」において、長時間労働や残業代未払いが問題となっている。文春オンラインが「制作進行の社員は月393時間働き、帰宅途中に倒れた」と報じたほか、労働基準監督署から是正勧告を受けていたことも明らかになった。
「総労働時間が月250時間を超えないように」
そのマッドハウスにおいて、労働時間を記録するタイムカードの過少申告が常態化していたことが文春オンラインの取材でわかった。
現在、ブラック企業ユニオンに加盟し、マッドハウスと団体交渉を行っている現役社員・Aさんが語る。
「昨今の『働き方改革』に対応するため、マッドハウスではウェブを用いた勤怠管理システムを導入しました。毎月頭に前月のタイムカードを社員が申請して、上司である担当プロデューサー、さらに上のチーフプロデューサーの順に承認される仕組みです。ただし、このシステムの導入にあたっては、総労働時間が月250時間を超えないように日々の業務をこなしてくださいと指示がありました。さらには、休憩時間と待機時間をこまめに入力するように、とも。
ただし、実際には制作状況の悪化にともない、月の総労働時間が250時間以上になることも多々ありました」
待機時間とはいえ、帰りたくても帰れない
Aさんは、休憩をきちんと取れていない日も含め、正確に日々の休憩時間を打刻しているのに、なぜこのような指示をされるのか理解できなかったという。後から明らかになったことだが、会社は「仕事をしていない時間、待機している時間」はもれなく休憩時間であるという認識だった。待機時間も「休憩時間」としてカウントされ、総労働時間から引かれる設計だったのだ。
「制作進行の仕事の性質上、いわゆる“待機時間”はどの工程においても発生します。私だけでなく、他の社員も同様です。例えば、社内にいる演出や監督によるL/O(レイアウト)や原画チェック、あるいは原画マンの仕上がりを自宅前で待つこともあります。ただし、この場合の“待機時間”とは、スタッフや上司からの連絡が来たら常に対応しなければいけない状態です。帰りたくても帰れないことは日常茶飯事ですから」