昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載この鉄道がすごい

さようなら、ひたちなか海浜鉄道の駅猫「おさむ」 最期まで愛された日々

社葬(お別れ会)は7月6日に

2019/06/25

genre : ライフ, , 企業

 ひたちなか海浜鉄道の那珂湊駅で「駅猫」として人気だった「おさむ」が亡くなった。享年推定17歳。

駅勤務の開始を待っていたかのように

 同社の公式サイトで吉田千秋社長が綴る「海浜鉄道日誌」によると、死亡時刻は2019年6月23日4時20分。駅勤務の開始を待っていたかのように息を引き取ったとのこと。亡骸はすぐに火葬され、お骨はひたちなか市内のペット霊園みどり野にある。祭壇の安置は23日から3日間の予定だったけれども、霊園のご厚意で月末まで祭壇に置かれる予定だという。

那珂湊駅のホームでくつろぐ「おさむ」

 ペット霊園みどり野の前社長、沼尻巖(いわお)さんもおさむを懐かしむ。

「おさむは茨交(茨城交通湊線)時代から居ましたよ。私たちも会いに行っていました。息子(現社長)が乗りもの好きでね。一緒に散歩して那珂湊駅へ行くと、車庫のあたりのレールの上でおさむが遊んでいました。バスロータリーにもいたなぁ」

ペット霊園みどり野は、JR勝田駅よりひたちなか市コミュニティバス「勝田南コース」で部田野交差点広域斎場入口から徒歩7分。ひたちなか海浜鉄道那珂湊駅からタクシーで12分、料金の目安は2500円前後。場外馬券売り場「オフトひたちなか」の隣 ©杉山淳一

駅長どころか社員にもならず

 ひたちなか海浜鉄道の支援グループ「おらが湊鐵道応援団」のFacebookページでも思い出が綴られていた。

〈当時、応援団では、茨城交通時代に倉庫として使われていたケハ601内部の整理、清掃し、ギャラリーとして公開する活動を行っていました。確か、2009年7月24日、それが終わって那珂湊駅裏のバス車庫の中を通り抜けているときです。黒猫が一匹、私達に付いてきたのです。逃げるかと思ったらそんなことなく、ホームまで一緒に。その黒猫が後に「おさむ」と駅員さんに名付けられることになります〉

〈翌日、早朝に那珂湊駅にお邪魔して、昨日の黒猫はもういないのかな、なんて思っていたら、下り線ホームの下の草陰にいて、私を見つけてやって来て、スリスリしてきました。一緒にいた仲間が水を飲ませたらもうゴクリゴクリと飲んで、お腹も空いてるんじゃというので、そういえばツナ缶が偶然車にあったな、と持って来て食べさせたら完食。そんなこんだで当時とても痩せこけていた黒猫がそのまま絵に居着いて、おさむと命名〉(いずれも原文ママ)

Facebookより

 おさむは駅に居着いた。やがて朝日新聞、読売新聞、TBSテレビに取材される。2年前の2007年に和歌山電鐵貴志川線で「たま駅長」が就任しており「我が町にも猫駅長」と話題にしたかったかもしれない。

 しかし、「おさむ」は駅長どころか社員にもならず、駅に棲み着いた猫として、鉄道員や乗客、地域の人々に愛される存在となる。やがて孤高のおさむも高齢となり、晩年は駅事務室に寝床を与えられ、社員待遇として手厚い保護を受けていた。

那珂湊駅にはひたちなか海浜鉄道の本社があり、「おさむ」の寝床もあった ©杉山淳一