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「いまのポップスは腰から下が抜け落ちている」 藤井フミヤが語った「表現の核に必要な色気」

藤井フミヤ氏インタビュー

2019/07/06
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藤井フミヤの作風の、幅広さの秘訣

 クリムトの装飾的な画面構成から即座に日本美術の影響、すなわちジャポニズムを読み取るなど、西洋美術も日本美術も分け隔てなく観る趣味の広さが窺える。そういえばご本人の作風も、コンピュータ・グラフィックスを駆使した作品から水彩画や油彩画までと、じつに幅広い。8月に開催を予定している個展では、30年近い画業の全貌が通覧できることとなりそう。

「なんでこんなに幅広くなるのか……。自分でもよくわからないけれど、好奇心がいつだって尽きないのはたしか。いろんなものからすぐ影響を受けちゃいますしね。それこそアニメや漫画からも、何かを吸収して作品に反映している」

©深野未季/文藝春秋

 なんでも取り入れ、思うがまま展開させられる自由さこそ、現代アートの「肝」だとも理解している。

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「20世紀のポップアートを切り拓いたひとりロイ・リキテンスタインなんて、漫画のひとコマを拡大して作品と認めさせた。その流れの延長線上に村上隆さんをはじめ日本の漫画・アニメを発想のベースに持つアーティストがいるわけですよね。『やった者勝ち』なところが、現代アートにはありますよね。

藤井フミヤ《パステル観音》

 とらわれずに、思った通りにやってみればいい。そう信じさせてくれるという点で、アートは貴重な存在です。日本にもそういう例は早くからあって、たとえば千利休は、漁村で投げ捨てられていたタコ壷を茶室で茶道具として使ったりしたでしょう? 自由すぎますよ(笑)。考えてみたら、利休はあんな昔からすでに現代アートの精神を先取りしていたんだともいえる。

 きっと、好奇心の赴くままに遊んでしまうのがアートの本質なんですよ。もちろん、自分なりのものの見方を築き上げるための勉強や修練も必要なんでしょうけれど。利休は己の茶の世界を確立させるために日々研鑽を積んだろうし、リキテンスタインだってアンディ・ウォーホルだって、あれこれ考え抜いたうえで作品をつくっているはずですよね」

©深野未季/文藝春秋

アートは、音楽に影響されている?

 では藤井フミヤご本人はどうか。日々、早朝から絵を描き続ける積み重ねが作品を生んでいるわけだが、もうひとつ音楽というベースがあり、それがほうぼうに影響を与えているのでは?