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宿題、定期テスト、固定担任制を廃止――千代田区立麹町中学の校長が起こした「革命」の原点

2019/07/03

「宿題」「中間・期末テスト」「固定担任制」を次々と廃止し、注目を集めている千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長(59)。

 ほかにも、服装頭髪の指導をなくし、修学旅行、文化祭、体育祭は生徒に企画と運営を任せ、放課後には近隣の大学生が生徒に無料で勉強を教える「麹中塾」や、英会話、スピーチ、プログラミングなどをプロから学ぶアフタースクールを開くなど、工藤による前代未聞の取り組みは枚挙にいとまがない。

工藤勇一校長

 工藤の存在は、良くも悪くもこれまで変化が少なかった公教育の世界に波風を立てている。過激ともいえる改革に、眉を顰める人もいるかもしれない。

 しかし、工藤は思い付きで大胆な決断をしているわけではない。工藤が考える学校教育の意義は「社会のなかでより良く生きていくために自ら考え、決断し、行動できる自律した人間を育てること」。工藤は一貫して、この目的を達成するために行動してきた。その原点は、山形県の旧松山町立松山中学校にある。

学活の授業で「自治」を導入

 1960年、山形県鶴岡市で生まれた工藤が東京理科大で教職員免許を取得した後、最初に赴任したのが松山中学校だった。中学1年生の担任になった工藤は、「教育というものの重みを肌で感じました」と振り返る。

「私はもともと人に使われるのも、人を使うのもイヤだと思って、消去法で教員の道を選んだ人間です。でも、中学校にはいろいろな問題を抱えている子がいて、この子たちを放っておけないと思いました。教壇に立ったら、僕を真剣に見つめている子どもたちがそこにいるわけです。その子たちの人生を預かるという責任の重さと、ある種の快感ですよね。俺はこの子たちのリーダーなんだから、頼られる人間にならなきゃと思いました」

千代田区立麹町中学校

 工藤にはひとつ、心に決めていることがあった。子どもの頃、自分が嫌いだった教師のようにはならないということだ。だから、暴力は絶対に振るわない。言いたいことを一方的に話さない。朝の会には、自分の失敗談を披露した。時には授業中に人生論も語った。そうして子どもたちとの距離を縮めていった。

 2年目に入ると、授業に「自治」を取り入れた。工藤は生徒が中心になって授業を作ることができる「学活」の時間を、「君たちにあげるよ。なにをするのか、一緒に考えよう」と持ちかけた。すると、子どもたちからどんどんアイデアが出てくるし、自ら動く。