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「貧乏人の食べ物」と蔑まれたタピオカ 3度目のブームは何が違う?

実はあの商品の“もちもち”にも貢献

2019/07/06

genre : ライフ, グルメ

 なんだか、とんでもないことになってきた。

 数年前からタピオカドリンクのブームが続き、従来の食の流行サイクルからいって、去年がピークだろうと高をくくっていた。が、予想は見事に外れ、沈静化どころか今年になってからの専門店の増殖ぶりはすさまじい。

 東京・渋谷エリアはもともと激戦区だったが、私が気づいただけでも6月中に新しい店が6軒登場した。都内の鉄道・地下鉄の各駅周辺に1軒はあるといわれ、スムージー屋などから急遽、業態替えしたケースも多い。

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 客の大半は若い女性だ。女子中高生のあいだでは、「タピる」が流行語になっている。「タピオカドリンクを飲みたい」なら、「タピりたい」だ。いま街で女の子の行列を見たら、ほぼタピオカ屋だと思って間違いない。とくに人気店、新規オープン店は延々長蛇の列で、歩行者の迷惑にならないよう、列を整理する警備員が出動している店も少なくない。

 ブームは全国に波及して、地方都市でも右肩上がりの出店ラッシュ状態だ。近年、ここまで大規模かつ爆発的な食べ物ブームは珍しい。

「タピオカ」の流行は、空前の「ティラミスブーム」から始まった

 今回のタピオカブームは、3回目である。1回目は1990年代の前半、ポスト・ティラミスに「タピオカココナッツミルク」が浮上したときだった。

 1990年春、ある女性誌の特集をきっかけに突如として起こったティラミスブームは、戦後最大級の食の流行現象だった。ブームを生んだいくつかの要因のうち、もっとも重要なポイントだったのが、それ以前の洋菓子では味わえなかった“ふわとろ”の食感。カップに入れて販売しなければ、形が持たないほどのやわらかさは、スイーツにおける食感革命だったといっても過言ではない。

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 ティラミスの成功体験で、食品業界では「新食感を作れ!」がビジネスのキーワードになった。柔らかさや弾力を強調した心地よい食感、おもしろい食感の演出は、菓子類だけでなく魚介練り製品、飲料の分野にも波及していった。

 以降、ふわふわのチーズ蒸しパン、表面パリパリ内側とろりのクレーム・ブリュレなど、それまでにない食感のスイーツが次々と人気を博した。そんな中、満を持して登場したのがタピオカココナッツミルクだった。