文春オンライン

「ドイツから帰国して、“カミングアウトしたい”が爆発した」女子サッカー・下山田志帆選手インタビュー

note

 今年の2月、とあるサッカーのプロ選手がツイッターにこう投稿した。

「女子サッカー選手やってます。そして、彼女がいます。」

 投稿したのは、当時ドイツ女子2部リーグのSVメッペンに所属していた下山田志帆さん(24歳、現在はスフィーダ世田谷に所属、MF)。十文字高在籍時には全国高校選手権で3位に入り、慶應大学在籍時にはユニバーシアードの日本代表候補に選ばれるなど、華麗な経歴の持ち主だ。

ADVERTISEMENT

 

 2014年に五輪憲章に「性的指向による差別の禁止」が明記され、多くのLGBTQアスリートが2016年リオデジャネイロ五輪に出場した。女子サッカーW杯で優勝し、「ホワイトハウスには行かない」と発言して一躍時の人となった米代表ミーガン・ラピノー選手も、2012年にカミングアウトしている。

 その一方で、日本では現役のプロスポーツ選手のカミングアウトは非常に稀だ。カミングアウトのきっかけや、今後の活動について改めて聞いた。

◆ ◆ ◆

――「note」上に掲載された、自身のカミングアウトについて話したインタビューが話題になりました。

下山田 思った以上に読まれて、正直驚いています。公開される前は、友人や知り合いからの反響がほとんどだろうと思っていたんですけど、「勇気をもらいました」「大きな一歩だと思います」とこれまでつながりのなかった方たちからもポジティブな言葉をたくさんいただきました。

 

――今年2月に公にカミングアウトしましたが、カミングアウトを決めた理由を教えてください。

下山田 慶應大学に在籍する学生アスリートだったんですが、大学を卒業して、女子サッカー界から違う世界にパッと出たときに、すごく苦しい思いをしたんですよ。

 女子サッカーの世界ではセクシャリティをオープンにしていたのですが、オープンにできない環境になったとき、言いたいけど言えないことが積み重なっていくつらさがあって。たとえば、「もっと髪伸ばしなよ」と軽く言われて、自分はそうしたくないのにと思うんだけど、うまく伝えられなくてモヤモヤしたり。

女子サッカー界に存在する、便利な“枠”

――女子サッカーの世界では、「メンズ」という言葉があって、多様なセクシャリティが自然に受け入れられていると話していましたね。

下山田 そうなんです。 女子サッカーの世界では、「メンズ」がいるということが当たり前のこととして認識されているので、「メンズなんだよ」と言うと、「そうなんだ」とすんなり認めてもらえる。 

 

――「メンズ」を改めて説明すると、どういうことでしょう。

下山田「メンズ」の概念を女子サッカー界の外の人に説明するのは難しいんですが……。

 強いて言えば、ボーイッシュな言動を好んだり、女性とお付き合いする人のことを指すことが多いです。でも、レズビアンの人もいるし、トランスジェンダーの人もいる。「メンズ」という一言に、性的指向(注1)も、性自認(注2)も様々な人が含まれています。

 なので、改めて定義するとすれば、女子サッカー界で自分のセクシャリティを受け入れてもらうための便利なワード、便利な“枠”、という感じでしょうか。

注1……どの性別の人を性愛や恋愛の対象にするか
注2……自分の性別をどのように認識しているか