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老後資金はライフプランの構築と資産運用で確保する

老後資金の不足問題で金融庁に批判が集まったが、公的年金だけで人生100年時代を乗り切るのは困難だ。自助努力で不足分を用意するにはどうすればいいか。生活デザイン代表取締役の藤川太氏に聞いた。

資産運用を検討するのは家計を貯蓄体質にした後

CFP ファイナンシャル・プランナー
生活デザイン株式会社 代表取締役
藤川 太氏
「家計の見直し相談センター」において、個人向け相談サービスを行っている。新聞や雑誌等でも活躍中
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活デザイン株式会社 代表取締役
藤川 太
「家計の見直し相談センター」において、個人向け相談サービスを行っている。新聞や雑誌等でも活躍中

「老後資金が2000万円不足する」とした金融庁の報告書が大論争を引き起こした。結局、報告書の存在が“なかったもの”とされたが、ここまで問題が大きくなったのはなぜか。ファイナンシャル・プランナーの藤川太氏はこう指摘する。「年金だけで暮らせないことは多くの人が気づいていたはずです。しかし、2000万円という具体的な数字が出たことで改めて驚いたのでしょう」

 この数字は総務省の「家計調査年報」を元に単純計算したもので、皆に当てはまるものではない。実際にはもっと不足する人も多いはずだ。

 しかし、今回の報告書には注目すべき内容もあった。不足する老後資金の準備の仕方が記載されていたことだ。過去の報告書では、「足りない分は運用で賄う」との記載だった。今回は、できるだけ長く働き、支出を再点検し削減することと、収支の改善に触れている。それができた上で運用の力を借りて資産が増えるスピードを加速させることが肝心だ。

 藤川氏は「資産運用においては、この順番を忘れてはいけません」と明言する。

 とはいえ、定年が目前に迫った人やすでに老後生活に突入した人は、これから2000万円を準備するのは難しい。どうすればいいか。「大事なのはライフプランを立てることです」

 50代、60代ともなれば、子どもが独立して大きなライフイベントもなくなる世代。いまさらライフプランなど必要か、と思う人も多いはず。現役世代は働いているから、貯蓄が少なくても、支出の多くは収入から支払うことができた。しかし、リタイア後は年金と貯蓄が頼り。目に見えているお金をいかに効率よく使うかが重要だ。だからこそ、ライフプランが必要という。

 「ライフプランを立てれば、どこまで使っても大丈夫なのかを見極めることができます。より余裕のある生活をしたいと考えるのであれば、資産運用を実践し、貯蓄が減る速度を遅くすることも考えたい」

 
 

経済成長が期待できる海外にも目を向ける

 とはいえ、値動きに一喜一憂しているようでは、安心して暮らせない。それを避けるには「心の折れない運用」が大事だ。リーマン・ショックのような経済危機で資産が大きく目減りしても、解約せずに持ちこたえられる金額に運用額を抑えておく。リーマン・ショックでは、国際分散投資をしていても価格は半分近くまで落ち込んだ。まずは自分が耐えられる損失額を考える。仮に「100万円程度の損失までなら耐えられる」なら、運用額は200万円程度に抑えておくのが賢明だ。

 「投資というと多くの人が安いときに買って、高くなったら売って利益を得るものと考えますが、それは間違い」と藤川氏。いつが安いのかを判断するのはプロでも難しい。値動きを利用して利益を確保するのは運試しのようなものなのだ。

 藤川氏は「多くの人が利益を得られる運用方法を利用するのがいいでしょう」と話す。それは、経済成長が期待できる国や地域に投資をすること。大きな原動力になるのは人口の増加だ。人が増えて消費が増えれば企業の利益が増えて、株価が上昇する。

 日本はどうか。少子高齢化で人口は減っていく。10年先、20年先の経済成長は期待しにくいだろう。投資と言えば、多くの人が国内を思い浮かべるが、それでは大きな成果は期待しにくいことになる。

 人口が増加している米国や新興国のほうが経済成長は期待できる可能性が高い。人口が増加するところでは、住む場所や働く場所も必要になる。その意味では、海外の不動産も有望な投資先になりそうだ。投資信託を利用すれば、日本にいながら海外の不動産に投資することも容易だ。

 「幸い、お金は簡単に国境を越えられますから、海外へ目を向けた投資を検討してみるといいでしょう」と最後に締めくくった。