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子どもに迷惑をかけない介護・相続への備えとは?

介護で子どもが苦労する、相続で子どもたちがもめる――。親からすれば絶対に避けたい状況だが、そのためには元気なうちに対策を講じておく必要がある。どんな方法が有効なのか生活デザイン代表取締役社長の藤川太氏に聞いた。

親のお金の出し入れを透明化すればもめない

 医療・介護の分野でいま大きな課題になっているのが2025年問題だ。団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者になると、介護や医療などの社会保障費が急増すると見込まれている。

 内閣府の「男女共同参画白書」(2018年版)によると、年齢が上がるとともに公的介護保険の要介護認定者は急増していることがわかる(下の図表)。

 
 

 これは子世代の生活にも大きな影響を及ぼす。最近は共働きが当たり前になっているから、親世代が要介護状態になったとしても、面倒を見ることができない。介護のために時間の融通が利きやすい職場に転職しようとする人も多いが、本人が中高年になっているので簡単ではない。転職できたとしても、収入が大幅に下がるケースが多い。親子共倒れになってしまいかねないのだ。

 ファイナンシャル・プランナーの藤川太氏は「介護で子どもに迷惑をかけないようにするには、お金を準備しておくしかありません」と指摘する。

 親が認知症になり、判断能力が失われてしまうと、親のお金を巡って子どもが兄弟間でもめる可能性もある。たとえば、同居している長男夫婦が親身になって親の面倒をみても、離れて暮らす弟から「兄貴が親のお金を使い込んだのではないか」と疑いをかけられるケースもある。親のお金を何に使ったのか、しっかりと記録を残しておいたとしても、完全に疑いは晴れない。

 それを防ぐ方法として、高齢者のお金の出し入れを支援する金融商品やサービスを利用する方法がある。信託銀行などが提供しているもので、本人の判断力や体力が低下してしまったときには、あらかじめ決めた代理人がお金の出し入れを代行できる。資産は信託銀行が管理しており、入出金の履歴は代理人以外の親族も確認できるので、誤解が生じることもない。

 信託商品は相続の際にも有効だ。たとえば、親世代がアパートを保有していて家賃収入があれば「親が亡くなっても家賃で暮らしていける」と考える子どももいるかもしれない。しかし、兄弟が複数いれば、平等にアパートを相続できるとは限らない。自立していない子どもがいれば、その家賃収入をあてにするだろう。そして、もめごとは泥沼化していく。

 「兄弟間の争いを防ぐ最大の方法は親の意志を遺言で明確にしておくことです」。遺言の作成から管理、執行までトータルでサポートしてくれるのが遺言信託だ。遺言信託は子どものいない夫婦やおひとり様にも有効。亡くなったときに相続人がいなければ、資産は最終的に国庫に納められることになる。生前にお世話になった人や応援したい団体にお金を残したいと考えるのであれば、遺言を残す必要がある。遺言信託であれば、希望する先に資産を遺贈したり、寄付したりできる。

不動産活用をするなら「企画力」が重要に

 一方、人口減少などで社会構造が変化しつつあるいま、相続対策を講じるのであれば、十分な吟味が必要。たとえば、アパート経営は古くからある相続対策だが、少子化で若年単身者は減少傾向にある。代わりに高齢単身者は急増している。ニーズの変化に合わせた活用が重要だ。「アパートだけでなく、老人介護施設や保育所を検討するのもいいでしょう」

 広い土地があるなら、ドッグラン付きのマンションにするなど、これからは企画力が大事になるという。とはいえ、保有する土地にどんな活用法が向いているかを判断するのは難しい。地域の人口動態など綿密な市場調査が欠かせないからだ。「不動産は長い年月にわたり利用されますから、30年経過しても古臭さを感じることなく街並みに溶け込めるデザイン性も重要です」と藤川氏。失敗しない相続対策のために、まずは信頼できるパートナー選びから始めてはどうだろう。