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「彼女がとてもおいしそうだったから」日本人留学生が女性の遺体を食べた“パリ人肉事件”とは何だったのか

 1981年、パリの大学院に留学中だった佐川一政氏(当時32歳)が起こした「パリ人肉事件」。現在70歳、介護を受けながら年金暮らしをする佐川氏に約1カ月密着、インタビューしたドキュメンタリー映画『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』が公開中だ。

 佐川氏の具体的な思いが描かれた記事を掲載する。(「週刊文春」2014年3月20日号)

1981年6月17日、パリ警視庁を後にする佐川一政氏 ©AFP/AFLO

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「私にとって性的欲望は、食人願望と同じでした」

 1981年6月、パリの大学院に留学中の佐川一政氏(当時32)が、自宅へ招いたオランダ人の女子留学生ルネさん(同25)を背後からカービン銃で撃って殺害。切断した遺体を捨てようとして見つかったことから、逮捕された。

 その後にわかった衝撃的な事実は、屍姦ののち、遺体の一部を生のまま、あるいは焼いて食べていたことだった。

 花の都で猟奇事件を起こした佐川氏の心の闇に、日本中の関心が集まった。

 パリ在住のジャーナリスト・広岡裕児氏は、逮捕されてサンテ刑務所に拘留された佐川氏と面会し、40通を超える手紙のやり取りをした。佐川氏は広岡氏を信頼し、さまざまな依頼をするようになった。

「グレース・ケリーを特集した雑誌や少女ヌード写真集の差し入れを頼まれたり、粘土で作ったルネさんの塑像をオランダの遺族に届けてほしい、という頼みごともありました。フランスの刑務所は洗濯をしてくれないので、持ち帰って洗濯して届けたりもしましたね」

「週刊文春」1983年4月28日号の「ついに今あきらかになる――佐川一政が書いたパリ人肉事件の真実『彼女を殺したのは食べるため……とてもおいしそうだったからです』」は、佐川氏からの手紙を紹介している。

〈私にとって性的欲望は、食人願望と同じでした。若い女性をみると、たちまちそういう気持になるのでした。

 この欲望は私だけのものだとは決して思いません。愛の行為、より正確にいえば性行為というのは、この欲望の変形ではないでしょうか。男が性交する時どう振舞うでしょうか。男は女の体のあらゆる部分をなめつくします。このとき、男は女を食べてしまいたい、無意識のうちに、むさぼりつくそうと思うものです。私はこの胸のうちにある欲望を実行してしまった。それだけのことです。(中略)

 一つ、プランがあります。『カニバル』というタイトルの雑誌を出しませんか〉

佐川一政氏 ©文藝春秋

 イギリスの成人雑誌の発行人に向けて、こんな提案をしている。企画の内容は具体的だ。

〈毎月(月刊誌にします)、『今月の料理』というのを載せます。つまりは『今月の女性』ですね。女性の体の『最高の部分』を分析しながら紹介するのです。更に、この『料理』についての私へのインタビューを載せるというのはどうでしょう。オリジナルなエロチシズムを満喫するための『人肉食い』の方法について語るのです〉