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日本の介護が「刑務所ビジネス」で破壊される日――内田樹×堤未果

日本の資産が世界中のグローバル企業に売り渡される“ハゲタカ”問題を考える(1)介護ビジネス編

「カネだけのグローバリストに日本は包囲されている」

 悲しいことに、その「アメリカの国益」に貢献した結果、アメリカ国民が幸せになるかというと決してそうではないのです。潤っているのは、「今だけカネだけ自分だけ」価値観をもったグローバリストで、一つの国籍ではなく、中国も欧州も入り混じっている。投資家たちの利害が一致したところで、各国の政府が忖度して動いているという構造ですね。中国は土地や介護ビジネスを、フランスは水を、アメリカとドイツは食を、という具合に、日本は包囲されています。

©末永裕樹/文藝春秋

内田 海外のヘッジファンドの出資者は、国籍関係なく、世界中の富裕層ですからね。別に彼らは彼らの祖国の国益に配慮しているわけじゃない。自分の個人口座の残高が増えればどこの国がどうなろうと知ったこっちゃない。でも、彼らは日本を切り崩すときは「アメリカがそれを望んでいる」と言うのがマジックワードになることは知っている。「アメリカのため」と言えば、日本の資源は「むしり取り放題」だということは知っている。日本の国民は「宗主国であるアメリカがこれを望んでいる」と言われると、一発で腰砕けになるからです。アメリカを「入口」にしさえすれば、日本の国富をいくらでも貪ることができる。

 政官財やメディアの上層部は「アメリカのために」という名目で国富を流出させています。「アメリカの国益を最大化することが日本の国益を最大化することである」という倒錯的な国益観が日本国内では広く信じられているから、したい放題なんです。彼らの場合は、そうすることで宗主国に自分たちの属国内での高い地位を保全してもらっている。安倍政権が長期政権であり得るのは、まさにそれだけが理由です。

 アメリカにとって安倍首相は「歴代総理大臣の中で最もアメリカの国益を優先させてくれた人」ですから。アメリカとしてはできることなら彼が未来永劫日本の首相であって欲しいと望んでいるはずです。日本の国土を提供し、日本の市場を開放し、日本の国富をアメリカに流し続けてくれるんですから。

 気の毒なのは一般の日本国民です。自分たちが納めた税金が見ず知らずのどこかのリッチマンの個人資産に付け替えられてゆくのを指をくわえて見ている。怒りもしない。そこまで属国民根性が骨身にしみている。