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日本の介護が「刑務所ビジネス」で破壊される日――内田樹×堤未果

日本の資産が世界中のグローバル企業に売り渡される“ハゲタカ”問題を考える(1)介護ビジネス編

介護分野は5つ星の投資商品

 どんなに少子高齢化が進んでいってもどうしても必要不可欠なもの――水道や食の安全、医療、介護にはビジネスとして高い値札がつきます。例えば介護分野などまさに「5つ星投資商品」です。アメリカの場合は死ぬのも自己責任なんで介護保険がない。だからみんな自分でなんとかしなきゃいけなくて、家を売ったりして老人ホームに入るんですが、月々の費用が非常に高い。入れたところで認知症を発症したりしてだいたい5年くらいで出されてしまう。この5年の回転率って、投資商品として非常に魅力的なんです。

©末永裕樹/文藝春秋

内田 老人ホームを出されたあとはどうなるんですか?

 自宅に戻ってあとは病院か民間のヘルパーさんを自分で雇ってください、と。でも民間のヘルパーにはかなりグラデーションがあって、私が取材したひと月60~70万円払って来てもらう例から、時給5ドルで無資格の不法移民がすごくブラックな状態で働かされている現場まで、さまざまです。たとえばメディケアで賄える月20万ぐらいの老人ホームに入れたとしても、コストカットでひとりのヘルパーさんが50人見ているような状況なので、本当に悲惨です。放置されたり、点滴のミスなどとにかく事故が多い。命の沙汰は金次第で、訴えたところで企業弁護士がついてるので絶対勝てません。運営会社はレイヤー構造になっていて本社は海外にあったりし、責任の所在がわからないんですよ。勿論これが全てではないけれど、「死ぬのは自己責任」の社会は本当に両極端で、あれは日本人から見るとショックな光景ですね。

 事の起こりはクリントン政権で、これから高齢化社会だから老人ホームを作る補助金は政府が出すと無担保融資をはじめてから急に乱立していった。政府公金を元に巨大なビジネスに成長しました。ビジネスで一番効率がいいのは、税金に支えられる事業です。運営は企業がとことんコストカットして、利益はタックスヘイブンに本社を移して税金逃れをするというビジネスモデルが一番効率いい。この流れは日本にもすでに来ています。

 2015年に、日本で介護報酬が下げられた当時、マスコミは「不正が起きてる」と盛んに喧伝しました。悪質な介護施設があると大々的に流して、介護報酬が大幅に切り下げられた結果、国内の介護事業者が戦後最大の倒産件数を記録しました。その倒産した介護施設の多くが外資に買われていった。介護施設は不動産投資にもなるし、介護の需要そのものはこれから増えてゆく。確実に利益が出る投資商品です。

内田 国内の介護事業者を潰して、外資に差し出したわけですね。