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熱を下げるには血液量がカギに

 信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授が次のように解説する。

「人の体温は36~37度ですが、皮膚の表面温度は33度程度と少し低め。そこで皮膚への血流を増やして皮膚の温度を高めるのです。皮膚の表面温度が高くなると、気温との温度差が生まれ、熱が放出されていきます。例えば、机の表面に腕を乗せると冷たくて気持ちいいですが、それは熱が逃げているから。皮膚が血液を冷やすラジエーターのような役割を果たしているのです」

 ところが血液量が少ないと、ラジエーターの機能が落ちるという。

「まず血液量が少なくなると、それだけ皮膚を温めることが難しくなる。さらにもっと問題なのは、血液量が少ないぶんだけ体内の各臓器で必要な血流量を維持しにくくなるということです。とりわけ一番大切な脳や、心臓などの重要な臓器に酸素がいかなくなると非常に危険です。

 また、大量に汗をかいた場合、発汗量の約10%の血液量が失われます。たとえば1リットルの汗をかくと100ccの血液が減っている。すると脳や臓器への血流を優先的に高めるため、皮膚に血液が行かなくなり体温調節は二の次になってしまう。これが続くと熱疲労の状態に陥ってしまいます」(同前)

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 皮膚への血流量が減れば、それだけ汗をかかなくなり、汗による気化熱で体温を下げることもできなくなる。もう1つの大事な放熱システムも使えなくなってしまうのだ。

「水分の貯水池」下半身の筋肉量も重要

 さらに血流量の維持には、下肢の筋肉量が関係していることがわかっている。

「心臓は収縮することで血液を身体中に送り出しますが、心臓にはストローのように体の末端から血液を吸い上げる能力はありません。心臓より下に溜まった血液を送り戻すには、下肢部の大きな筋肉が使われる。この筋力が弱いと、心臓にたくさんの血液が戻らず血流量が落ちてしまうのです。

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 暑い野外で作業などをしていれば、放熱のため心臓からどんどん血液が送り出されます。ところが筋肉量が少ないと送り出された血液が心臓に戻ってきません。これにより心臓から拍出される血液量が減って血圧が低下する。すると脳への血流が維持できなくなり失神してしまう。これが熱失神のメカニズムです。逆に筋肉が増えて強力なポンプになれば、それだけ心臓に戻される血流量が増え、体温の調節機能が上がることになります」(同前)

 また、筋肉には「水分の貯水池」という役割もある。実は、筋肉の約60%は水分で、体内の水分量のうち約40%が筋肉に蓄えられている。筋肉があればあるほど多くの水分を蓄えておくことが出来るわけだ。

 では、血液量を増やすには、どうしたらいいのだろうか。