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「安倍さんはレガシーをつくった」進次郎から飛び出した発言は何を意味するのか

自民党の看板弁士は豹変した――ルポ参院選2019 #5

2019/07/18
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「アレ、意外と少ないねえ」

 自民党きっての人気弁士、小泉進次郎が現れる予定の演説会場で待ち構えていると、時々こんな声が聞こえてくる。全国各地を駆け巡る彼の応援行脚は、2010年の参院選以来、通算7回を数えているが、これまで取材を続けてきた私でも初めて耳にするような反応だ。

 

民放各社が競うように派遣していた密着カメラ部隊も……

 2年前の衆院選で「完全密着取材」を行った時には、どこに行っても握手しようと押し寄せてくる群衆の「波」に呑まれそうになった。だが、今回は身の危険を感じるほどの熱を帯びている会場は、選挙戦が残り3日となった時点でも片手で数えられるほどしか見ていない。

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 おかげで大きな混乱はなく、小泉も予定通りの大移動を続けている。

 参院選最後の日曜日となった7月14日、小泉はスイカの名産地として知られる山形県尾花沢市内のホールでこの日最後の応援演説をぶった。以前の選挙では民放各社が競うように派遣していた密着カメラ部隊も、その夜はTBSの1台だけになった。

 終了したのは20時過ぎ。私のことを最寄り駅まで送り届けてくれた地元のタクシー運転手が山形訛りで訊ねてきた。

「失礼しますが、今日は(ホールに)どなたが来ていたんですか?」

 

「来たのは息子さん。進次郎さんですよ」「なーんだ」

 私は「地元のタクシーが知らないなんて、自民党の告知不足だな……」と怪訝に思いながら、自分と世代が近そうな運転手に返事をした。

「自民党の演説会ですよ。小泉さんですよ」

「えーーーーー。無料でしょ。会社休んで、行けば良かったー。あっちこっち講演に回っているんですよね」

「いやいや、それは純一郎さんで」

「ん、違うんですか?」

「来たのは息子さん。進次郎さんですよ」

「なーんだ」

 小泉の話題は終了。運転手は、4日前に安倍晋三が尾花沢に来援した際、地元で有名な畜産農家を「お忍び」で訪ねたという情報を嬉しそうに語り始めた。