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前期は1004億円の巨額赤字! 野村證券のビジネスモデルが“時代遅れ”になった理由とは?――文藝春秋特選記事

かつての「ガリバー」はこうして歪んだ

2019/07/23

「文藝春秋」8月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年7月12日)

 かつてはガリバー証券とも称されていたのが野村證券である。しかし、いま、同証券を主力とする野村ホールディングスが悪戦苦闘している。

 野村證券は以前の不祥事の記憶が消えかかったころに、新たな不祥事を引き起こしてきた。ゆえに「野村10年サイクル説」などとも言われてきたのだが、今回は従来にも増して厳しい。不祥事が連発するとともに、前期には純損失1004億円という巨額赤字決算を余儀なくされた。いったい、野村に何が起きているのだろうか。

国内30店舗以上を統廃合

犯罪事件の合間に行政処分も

 一連の不祥事を振り返ってみると、昨年、営業社員による顧客資金の流用事件が起き、それに続いて、社員が大麻利用で逮捕された。さらに今年には若手社員2人が合コンの果てに女性を強姦するという破廉恥な事件を起こし、世間を唖然とさせた。と思いきや、7月2日、同社のホームページに掲載されたのが「当社元社員による投資詐欺の疑いについて」という、架空投資商品売込みに関する注意喚起の呼びかけだった。

 それだけではない。これらの犯罪事件の合間に、野村は金融庁から行政処分を受けている。インサイダー事件まがいと言える重要情報の漏えい・悪用がその理由である。具体的には、東証第1部、同第2部などとなっている株式市場区分の見直しを目的とした東証主催の会議で交わされた情報が、その委員を務めていた野村総研関係者から野村證券のチーフストラテジストに伝わり、さらに同ストラテジストが国内外の同社営業社員に情報伝達するというルートで漏えいし、営業社員たちが早耳情報的にビジネスに悪用したという内容である。

怒りを爆発させた金融庁

 この処分に際して、金融庁の姿勢は厳しかった。証券の行為を規制する「金融商品取引法」の法令等諸規則に違反する行為ではないとしながら、「資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為」と断じたからだ。法令上のルール違反ではないものの、法の精神である常識が欠如したというわけである。

 事件を把握して以後、金融庁内では野村に対する怒りが爆発していた。たとえば、ある幹部は、「野村は2012年に増資インサイダー事件を起こしたことを忘れたのか」と言葉を吐き捨てていたし、別の幹部は「野村は株式市場区分見直しを潰しにかかったのか」と強く疑った。