参院選が終わり、自民党、公明党の与党は71議席と改選過半数を上回ったが、自民党は9議席減らす結果に終わった。安倍晋三首相は22日午後2時から記者会見を開き、改憲について強い意欲を示したが、同時刻に開かれた吉本興業の岡本昭彦社長のグダグダだった記者会見に話題を持っていかれてしまった。あらためて安倍首相の改憲発言について見てみたい。

安倍晋三 首相
「この選挙では、憲法改正も、大きな争点となりました」

自民党ホームページ 7月22日

参議院選挙から一夜明け、記者会見する安倍首相 ©時事通信社

 会見の冒頭で、「『安定した政治基盤の上に、新しい令和の時代の、国づくりをしっかりと進めよ!』と、国民の皆様からの力強い信任を頂いたことに、厚く、厚く御礼を申し上げます」と強調した安倍首相。「!」を入れるあたり、自民党ホームページの書き起こしにも力が入っている。

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 安倍首相の考える「国づくり」とは、憲法改正とほぼイコールである。今年1月、地元の山口県下関市で開かれた自身の後援会の会合では、「憲法改正を含め新たな国づくりに挑戦していく1年にしたい」と決意を語っていた(産経新聞 1月5日)。

実は自民党内でも盛り上がっていないのでは

 しかし、本当に憲法改正が「大きな争点」だったかは疑問だ。安倍首相だけがカッカしているが、自民党の他の議員たちもそれほど乗り気じゃないところが透けて見える。

 ジャーナリストの有本香氏はラジオ番組で、「実際には自民党の候補は、もちろん何人かですけれども街頭演説を聞きに行きましたが、(筆者注:憲法改正について)言っていないですよね」「自民党も改憲に関しては、積極的かというと少し疑問です」と証言している(ニッポン放送 7月23日)。

5月には国賓としてトランプ大統領を招いた ©JMPA

 また、共同通信と選挙・政治家情報サイト「選挙ドットコム」が参院選公示後、政党・政治団体の候補者がツイッターに投稿した内容を5つの政策分野に絞って比較したところ、自民党内でも憲法改正に関する投稿は年金問題の半分にも満たないことが判明していた(共同通信 7月19日)。憲法改正は大きな争点ではなかったのだ。

安倍晋三 首相
「少なくとも『議論は行うべきである』。これが国民の審判であります」

自民党ホームページ 7月22日

 選挙の結果、安倍政権下での改憲に前向きな自民、公明両党に日本維新の会を加えた「改憲勢力」は、非改選の議席と合わせても国会発議に必要な3分の2(164議席)を割り込んだ。改憲勢力がはっきりと後退し、党内には「勝ったのか負けたのか微妙」という声もあるそうだが(日刊スポーツ 7月22日)、「勝利」をアピールする安倍首相の中では「国民の審判」が下ったらしい。