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15分眠れなければベッドを出よう

 抑うつ症状などを呈する重度の不眠症の場合は、病院で根治すべきだ。だが、いわゆる「寝付けない」、「夜中に目が覚める」といった睡眠障害については、自宅でも実践できる対処法があるという。

 まず、専門家が口を揃えて強調するのが「睡眠に対する誤った考え方を変える」ことだ。作業療法士の菅原洋平氏が語る。

「睡眠障害を抱える人の多くは、『自分だけが眠れない』と思い込んだり、『このまま眠れなかったら死んでしまうかもしれない』とパニックを起こす人もいます。眠れないことに過度の不安を抱いているんです」

 しかし、これらの訴えは睡眠に対する誤解に基づいていることも多いという。

【本当に必要な睡眠時間は?】

 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構副機構長の櫻井武教授によれば、そもそも「年齢をとると、睡眠時間は若い人に比べて短くなります。5時間、6時間で十分な人も多いのですが、それでも足りないと感じてしまう」という。

「睡眠中は脳の代謝によって出た老廃物の処理や、脳内に取り込まれた情報の整理が行われます。ただ、年齢をとるに従い、基礎代謝は低下し、整理すべき情報も少なくなってくる。そのため高齢者の睡眠時間は短いのです。8時間以上の睡眠を理想にしている人が多いですが、高齢者はそんなに長時間眠ることは難しい。そもそも、8時間という数字はあくまでも日本人の平均睡眠時間(正確には7時間42分)に過ぎません。にもかかわらず、それにとらわれて『寝ていない』と悩んでいる人が多い」(同前)

 睡眠に対する誤った考え方が、かえって睡眠障害を悪化させてしまうケースは他にもある。「寝付けなくてもベッドで横になっていれば、いずれ眠れる」という考えもその一つだ。

「高齢者は早い時間にベッドに入って、寝付けないのに何時間もベッドの上で過ごしたりしますが、これは間違いです。人間はある場所で酷い目に遭うと、そこをそういう場所として記憶する。これを『条件付け』と言いますが、ベッドも同じで、寝付けないのにベッドで過ごしていると、次第にベッドを『眠れない場所』として記憶して、益々眠れなくなるのです」(同前)

 寝付けない時は思い切って、ベッドを出るべきだ。

15分眠れなければ、ベッドを出ましょう。横に椅子を置いて、そこで読書やラジオを聴くなどして、眠くなるまで待てばいい。とにかく、ベッドは寝るためだけの場所として、脳にインプットさせることが重要です」(前出・菅原氏)

 夜中に目覚めることを恐れている患者も多いという。しかし、朝までぐっすり眠る睡眠は、若者でもなければ難しい。

「深夜2時とかに目が覚めると、時計を確認して『また駄目だった!』と落ち込んでしまう。そうすると、かえってその時刻が脳にインプットされて、益々同じ時間に起きるようになってしまう。だから、いっそのこと深夜は時計を伏せて見ないようにすべきです」(同前)

【起床後4時間以内に日光】

 睡眠に対する考えを改めたら、次に重要なのは「日中の過ごし方」だ。日中の過ごし方を工夫することで、夜に眠りやすい状態を作れるという。

 菅原氏によれば、朝起きてまずやるべきなのは、太陽の光を浴びることだという。

「太陽の光を浴びると、メラトニンという睡眠を司るホルモンの分泌がストップし、それを合図に『1日が始まった』と体内時計がカウントを始めます。そして、16時間後にメラトニンの分泌が再開し、夜に眠気を催すという仕組みです」

 ただ、漫然と光を浴びれば良いわけではない。

「できれば窓際1メートル以内に近づいて、1500ルクス以上の光を浴びるようにしてください。それくらい浴びないと、メラトニンの分泌がストップしない。さらに、脳の光への感度は時間と共に低下するので、起床後4時間以内に浴びるようにしてください」(同前)

 一方で、朝早く目覚めてしまうことに悩んでいる人の場合は、反対に朝の光は避けて、夕方以降の光を浴びることが効果的だという。体内時計が夜型に調節され、遅く寝て、遅く起きるリズムを作ることができるのだ。

朝日を浴びるときは窓際1メートル以内
朝日を浴びるときは窓際1メートル以内