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連載近田春夫の考えるヒット

中川翔子とのデュエットで小林幸子が魅せた「名人芸」――近田春夫の考えるヒット

2019/08/28

『風といっしょに』(小林幸子&中川翔子)/『夢の振り子』(竹島宏)

絵=安斎肇

 小林幸子が中川翔子とデュエット! とのニュースに、我が好奇心の向かう先はといえば、そりゃなんといっても二人の歌い手としての相性とは一体……どんな具合なのかなかなか見当がつかぬところだろう。これは聴いてみたくなる。背景というか裏事情というかこのキャスティングに至るまでのいわゆる“経緯”などもきっと色々あった筈だが、そこは置き一応資料的な話をすれば、'98年に小林幸子が一度出したシングルのリメイクだそうで、前回同様、ポケモン劇場版のエンディングに使われているとのこと。担当の若者の話では、聞いた感じはあまり変わっていないようである。

 さて、ネット上にも聴くことの出来る音があったので再生を始めると、冒頭の部分は小学生ぐらいの女の子だ。えっ、これが中川翔子なの? こういう声なんだぁ、とかなんとか、そうこうするうち小林幸子の登場とは相成る訳だが。その瞬間これは居住まいを正して拝聴せねば! 思わずそんな気分にも襲われたものである。そして時を同じく、すかさず脳裏をよぎったコトバやらイメージやらなにやらを要約するならば、畢竟(ひっきよう)「芸」というテーマに話題は収斂(しゅうれん)することになるのやも知れぬ。

風といっしょに/小林幸子&中川翔子(ソニー)1998年に公開された初のポケモン映画、その3DCGリメイク版エンディング。

 まず咄嗟に浮かんだのが折り鶴だ。あれを、そこそこならともかく完璧にピシッと仕上げるのは実は難しい。いつぞや名人の折った鶴を見る機会があったのだけれど、本当に次元の違う優美さを誇っていた。その境地に至るまでにどれほど折ったことか。或いは日舞などにしても、ちょいとした所作がちゃんとこなせる/さまになるようなレベルまでくるのにも、相当な歳月の積み重ねは必要だろう。

 どちらにもいえるのは、そこには約束された“みてくれの美しさ”が、揺るぎなく到達点として存在する。誤解を恐れずにいうのなら、前衛や下手ウマという発想の入り込む余地はない世界だ。敢えて申せばかろうじて“風流”の考えがそういった文脈に繋がるのかも知れないが……。

 いずれにせよそのような絶対的といっていい表現の頂点を極めるためには――自由な価値観や様々な基準の混在するjpop一般とは違い――必ず厳しい“お稽古”がついてまわること想像に難くない。繰り返しになるかも知れぬが、芸は“仕込まれる”ものといっても、jpopの世界にはそのいい回しはないのである。

 私は彼女のそんな、いってみれば“玄人ならでは”の鍛え上げられた喉/歌いっぷりの前には、ついつい半端な気持ちで接することが出来なかったということであるが、このサッちゃんお得意の、官能性を自在に発揮してみせる技術は、本音いうとポケモンなんかじゃなく、もっと酸いも甘いも嚼(か)み分けた大人相手に披露してほしかったんですけどね、うんといやらしく!

夢の振り子/竹島宏(テイチク)10年前に山内惠介、北川大介とともに「イケメン3」と称された。NHK BS時代劇『大富豪同心』主題歌。

 竹島宏。

 動画(殊に歌い出し)のアクションにはマジ驚かされた。曲が普通なだけに、その落差のすごいことすごいこと!

今週のユーチューバー「ローリング・ストーンズの動画見たことある? ライブの予告編としてうまくできていて、見るとライブに行きたくなるんだよね。触発されて、オレもLUNASUNで一緒にやっているOMBと、YouTubeに動画をアップしたよ。検索してみて」と近田春夫氏。「これから夏から秋にかけてライブ活動いっぱいやるので、よろしく!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。
https://www.youtube.com/channel/UCgRQWiHgyv3k4qhF9

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出典元

安倍官邸と蜜月 吉本のドン<大崎会長>が狙う血税122億円

2019年8月8日号

2019年8月1日 発売

定価420円(税込)