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高齢者運転、7つの掟……「逆キツネポーズ」ができない人は要注意――2019上半期BEST5

2019年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。医療部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年5月26日)。

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 高齢者の暴走運転を報じるニュースに、ウチの親は大丈夫か、と不安になる読者も多いだろう。そこで今回、高齢ドライバーこそ陥りやすい罠や注意点、免許返納を渋る老親の説得方法、それでも運転を続けたい場合はどうすればいいか……完全保存版でお届けする!(「週刊文春」5/23号より一部転載)

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75歳以上のドライバーによる死亡事故は前年に比べて急増

 東京・池袋の高架下、歩道に設置された献花台には今も100本を超える清涼飲料水のペットボトルが置かれ、その脇に50束ほどの花束が手向けられている。今からおよそ1カ月前の4月19日、87歳男性の暴走運転によって、母親と3歳の幼い娘が命を落とした。

現場に設置された献花台 ©文藝春秋

「加害者の飯塚幸三氏は東大卒の元通産官僚。現在も入院中で逃亡の恐れもないため、逮捕はされていません。なぜ運転を止められなかったのか、と家族への批判の声も出た。死傷者は計10名で、損害賠償額は1億円を超える可能性もあります」(社会部記者)

 この痛ましいニュースを見て、“ウチの親もハンドルを握り続けているが、本当に大丈夫だろうか”と不安に思った読者も多いだろう。実際、75歳以上のドライバーによる死亡事故は460件(18年)と、その前年に比べて42件増と急増しているのだ。

3年に一度の認知機能検査では不十分

「17年に道路交通法が改正され、75歳以上の高齢者は3年ごとに教習所などで認知機能検査を受けることが義務付けられた。免許更新は厳格化されたはずでしたが……」(同前)

 検査は、16種類のイラストを見て、数分後に何が描かれていたかを答える問題など。49点未満だと認知症の疑いありとされ、医師の診断を受けなくてはならず、認知症と診断されると免許の更新ができなくなる。ところが昨年検査を受けた約217万人のうち、免許停止に至ったのは、僅か約2000人にとどまる。

高齢者講習で行われる認知機能検査(警察庁HPより)
 

 脳と運転の研究を行う高知工科大学・朴啓彰(パクケチヤン)客員教授が警鐘を鳴らす。

「高齢者の認知機能は一気に低下することも多い。しかし認知機能検査は3年に一度なので、その変化に対応できません。また、運転に必要なとっさの判断も確かめようがないのです」

 飯塚氏も85歳の時にこの検査を受け、問題ナシと診断されていた。だがその翌年、足を悪くするなど肉体の衰えが目立ち始めたという。(1)免許を更新したからといってお墨付きを得たわけではないのだ。