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京アニ放火殺人事件 なぜ「原画サーバー」は奇跡的に焼失を免れたのか?

“火災調査のプロ”元東京消防庁防災部長が注目した1枚の写真

2019/08/14

 アニメ製作会社「京都アニメーション」に対する放火事件で犠牲者35人のうち10人の名前が公表され、深い哀しみが広がっている。だが悲痛な空気に包まれている中、かろうじて前向きなニュースも届いている。

 1つは凶行に及んだ青葉真司容疑者が意識を回復したことだ。容態は予断を許さないが、回復が進めば捜査当局による事情聴取を通じて動機が解き明かされる可能性が高まり、裁判を通じて罪を償わせる道につなげられる。

 そしてもう1つは、スタジオ1階の室内にあったサーバーが焼損を免れていたことだ。

消防の指揮隊長を絶句させたほどの猛炎

 サーバーは製作スタッフたちの手作業や情熱の精華である原画や絵コンテなどのデータを保存していたものと見られる。大量の黒煙を吐き出していたあの猛炎の映像を目にした者からすると、半ば信じがたい奇跡にも思えた。

2階東側(正面) ©広野真嗣

 青葉容疑者がぶちまけたガソリンに引火した火の玉は、現場に最も早く到着した57歳の指揮隊長をして「経験したことがない」と絶句させたほどの業火となって3階建て約690平方メートルをほぼ全焼した。実際、製作に用いられてきた多くのパソコンは原形をとどめないほど甚大な被害を受けたが、このサーバーに限って被害が及ばなかったことになる。

 その主因を新聞は〈サーバーは全焼した3階建てスタジオの1階に(略)周囲をコンクリートに覆われた部屋にあったこと〉(朝日新聞7月30日付夕刊)と書いている。

 だが現場の焼け跡を実際に歩いてみると、1階はもちろん、40以上ある窓という窓から黒煙が吐き出された痕跡を見出すことができるほど苛烈な状況である。一体何がサーバーを救ったのだろうか。