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京アニ放火殺人事件 なぜ「原画サーバー」は奇跡的に焼失を免れたのか?

“火災調査のプロ”元東京消防庁防災部長が注目した1枚の写真

2019/08/14

貧困層が引き起こすテロリズムは新たな局面に入った

 青葉容疑者の動機は、まだはっきりしていない。だが、さいたま市郊外の家賃約4万円のアパートに暮らしており、生活保護を受けていたという情報もある。幼くして両親が離婚し、犯罪に手を出した末に貧困生活を強いられた経緯から、その心の内側に溜め込んだ憤懣を一方的な思い込みで京アニに振り向けたようだ。

 掲示板サイトには昨年9月から11月にかけて、「アイデアをパクる貴様らだけは絶対に許さん」「爆発物もって京アニ突っ込む」などと、青葉容疑者と共通した特徴を持つ憎悪を書き込んでいる人物がいたことが指摘されている。この時期は、平日の深夜に室内から繰り返される騒音について、近所から警察への相談が相次いでいた時期とも重なる。

献花台には多くの人が訪れている

 こうしたサインが青葉のものかは確定できない。暴発のサインを事前に見出し、あるいは抑止する方法が、警察や行政にあったのか、なかったのか。その検証は、今後注目されるポイントとなる。

 前出の伊藤氏は現在、核兵器や化学兵器も含めた国民の危機管理を考える自衛隊OBらによるNPO法人「NBCR対策推進機構」(東京都)の特別顧問も務めており、その立場から今回の放火事件を通じて、貧困層が引き起こすテロリズムは新たな局面に入ったことを指摘した。

 筆者は〈京アニ火災「令和新型テロ」の悲劇〉と題したレポートを「文藝春秋」9月号に寄稿し、その中で伊藤氏の見解も記した。日本社会の貧困層が拡大する中で引き起こされる構造的リスクについて、一から考え直すべき時期に差し掛かっているように思えたからだ。
 

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