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「表現の不自由展」で炎上。あいちトリエンナーレの「歴史ネタ」はなぜ面白いのか?

「表現の不自由展」で炎上。あいちトリエンナーレの「歴史ネタ」はなぜ面白いのか?

軍歌、君が代、教育勅語、特攻隊などが参照されていて驚いた

2019/08/21
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 先日、あいちトリエンナーレ(あいトリ)に行ってきた。結論からいうと、軍歌、君が代、教育勅語、プロパガンダなど、自分好みの歴史ネタがあちこちで使われていて、たいへん面白かった。こんなに「海ゆかば」を聞いたのは、終戦記念日の靖国神社以来かもしれない。

 現代美術というと難解で意味不明だと毛嫌いする向きも少なくないけれども、どうしてどうして、一介の歴史好きでも十分に楽しめるものだった。

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の1つ「表現の不自由展・その後」で展示されていた「平和の少女像」。8月3日、企画展を同日で中止することが発表された。 ©時事通信社

 あいトリについては、「表現の不自由展・その後」の関係で炎上していることばかりネットでは取り上げられる。しかし実際の会場は、事前の印象とは大きく状況が異なっていた。

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特攻隊員も利用した旅館が会場に

 あいトリの会場は、名古屋市と豊田市に分散している。そこで私はまず、豊田市に向かった。

 現在の豊田市浄水町には、かつて海軍の飛行場があった。アジア太平洋戦争の末期、ここで神風特別攻撃隊草薙隊も編成された。今回、この草薙隊の歴史を参照した作品があると聞き、まず行くならばここだろうと思ったのである。

 場所は、豊田市駅から500メートルほど西にある喜楽亭。案内板によれば、「明治後期から続いた料理旅館」であり、「戦前には養蚕業、戦後には自動車産業の関係者が多く利用」したという。

喜楽亭の外観。かつては料理旅館としてにぎわった。

 もともとこの旅館は、豊田市駅の東側で1967年まで営業していた。残っている建物は大正から昭和初期にかけて建てられたもので、1983年に豊田市に寄贈されたのち、現在の場所に移築・復元された。

 そして案内板に書かれていない歴史がある。それは、戦中にこの旅館を海軍関係者が利用し、草薙隊の隊員も利用したということだ。

浄水駅近くにある草薙隊の碑。