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真面目に頑張ってきたけど「生きづらさ」を感じている中年女性に……“オタク活動”のススメ

著者は語る 『オタク中年女子のすすめ』(河崎環 著)

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『オタク中年女子のすすめ #40女よ大志を抱け』(河崎環 著)

「今日も暗闇バイクで1本、走ってきました」

 のっけからこう語るのは、ウェブメディアで人気のコラムニスト、河崎環さんだ。

「暗闇バイク」とは、クラブのような環境のスタジオで、ミラーボールが回るような派手な照明の中、大音量の音響に合わせて自転車を漕ぎまくる、というフィットネス。河崎さんが目下、ドはまりしているものだ。

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 お目当ては、あるイケメンインストラクター。彼に微笑みかけられたい、褒められたい一心で、彼のレッスン・チケットや、彼の歓心を買うためにスタジオ・オリジナルのウェアを熱心に購入しているそう。構造としてはまるでアイドルの追っかけのようだ。

「私は幸運にも『暗闇バイク』に出会いました。同世代の女性が同じように夢中になれる趣味を持てるよう、そそのかしたいんです」

 本書は中年女性に自分らしくいられる、しなやかな生き方を提案するエッセイ集。そんな生き方を求めるとき、中年女性が抱える生きづらさやその背景にある日本社会の同調圧力を解きほぐす「オタク活動」が有効だと河崎さんは説く。

「テーマは、いわば『ロスジェネ“女子”の逆襲』なんですよ(笑)。というのも、私たちは人口ボリュームが大きく、子供の頃から受験を始めあらゆる面で競争を強いられてきた世代。女子大生になったら、その瞬間に女子大生ブームが終わって、世間から無視される存在に(笑)。社会に出たのは、成果主義の嵐が吹き荒れる2000年前後で、職業人としての市場価値はもちろん、女としての、妻としての、母としての価値まで俯瞰して考えてしまう。息を抜く場所さえなかったと思います」

 河崎さん自身は東京の超名門私立女子中高出身(途中、大阪の公立高に親の転勤で転校)だが、学生結婚・出産して「新卒お母さん」に。その後ライターへと転身した、という経歴を持つ。名門の出身校でも、「私はアウトロー」と笑う。