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日本からの「北のミサイル情報」は死活問題

 さらに、韓国が困ると思われるのが、GSOMIAが破棄されたことで、日本が捉えた北朝鮮の新型ミサイルの情報が得られなくなることです。北がいま飛ばしている短距離弾道ミサイル(メディアがミサイルと断定できないとして「飛しょう体」と呼んでいるもののことです)は、複雑な軌道で飛ぶロシア製「イスカンデル」をモデルにした新型とされ、その着弾情報は貴重です。北朝鮮のミサイルの着弾情報をいま一番持っているのは、実は、北が射場としている日本海を領海とする日本なのです。有事となれば真っ先にそのミサイルを撃ち込まれる韓国は、懸命に新型ミサイルの情報収集をしている。その情報が取れないとなれば死活問題となります。

 北朝鮮という現実の脅威があるのに、「反日」というイデオロギーのために、重要な情報を自ら捨てたということです。これで日米韓の連携は実質的に機能しなくなり、北朝鮮問題についても、日本を抜いた米韓の二国間で対策を講じることになります。「日本は関係ない」という宣言なのです。

 このように、GSOMIA破棄は、韓国にとってはデメリットしかない判断なのです。

徴用工、輸出規制を協議  会談を前に握手する河野外相(左)と韓国の康京和外相=21日、北京郊外 ©共同通信社

 一方、日本が韓国から得なくてはいけないGSOMIAに抵触するような軍事情報は限られます。あったとしても、ミサイルの発射地点や兆候など人的情報の類いで、アメリカも把握している情報です。情報を扱う現場にいた感覚からしても、日本が困ることはほとんどありません。そもそもGSOMIAは、韓国軍が自衛隊の情報が欲しいがために、何度も締結を求めてきた経緯があります。

 GSOMIA破棄は、私からすれば、「それでもやりたいなら止めませんよ」と言いたくなるような判断でした。今回の破棄という判断に、韓国軍幹部は危機感を抱いていると思います。

反日高揚のために旭日旗掲揚を拒否

 では、なぜ韓国は、このように不可解な「GSOMIA破棄」をするような国になってしまったのでしょうか。私は、韓国軍幹部が当たり前にやろうとしていることに、文大統領率いる青瓦台(大統領府)が口を出して、いびつにしているからだと思っています。

 この兆候が現れたのは昨年9月のことです。まず、文大統領によって「国軍機務司令部」が潰されました。

 この司令部は、北朝鮮のスパイを調査するほか、軍事と安全保障についての情報を大統領に報告する情報機関として大きな役割を担っていましたが、文政権の掲げる「積弊清算」(長年の政治的弊害の一掃運動)の一環で潰されてしまった。

 翌月、済州島で行われた国際観艦式では、常識外れの事態が起きます。

韓国済州島での国際観艦式 ©AFLO

 文政権は、日本側に、この観艦式で艦旗(旭日旗)を掲揚するなと要請してきたのです。つまり、反日国民感情を盛り上げるために、旭日旗掲揚を拒んでみせたわけです。そもそも軍艦は国連海洋法条約で定義と特別な地位が明記され、“国家そのものが海上を移動している”とでも言うべき存在なのです。どこの国にも、他国の海軍が掲揚する外部標識について指示する権利などありません。韓国側の要請は国際法にも触れる無礼な話でした。