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きっかけは徴用工判決ではなく、平昌五輪……GSOMIAを破棄した文在寅の思考とは?

「38度線を対馬沖まで南下させよう」という主張も

2019/08/28

genre : ニュース, 国際

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 韓国による日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAの破棄決定により、日韓関係は更なる悪化への道を進むことになった。文在寅大統領は、なぜ日韓破局への道を選んだのか。文大統領を突き動かした心理を検証してみた。

きっかけは平昌五輪だった

 GSOMIA破棄が決定される前の、8月中旬。韓国政府は必死に日本政府の動向を探ろうとする動きを続けていた。

 そうした中で、ある韓国政府関係者は日本に対する不満を打ち明けた。

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「文大統領が日本に対して嫌悪感を持つようになったのは平昌オリンピックのときからなんだ」

 一般的には現在の日韓関係悪化の引き金は、昨年韓国大法院で下された徴用工裁判判決だとされている。しかしそれ以前から文大統領は安倍政権へ強い不信感を持っていたというのだ。

 どういうことなのか。

南北融和を象徴する政治ショーとなるはずが……

 2018年に開催された平昌冬季オリンピックは、前年に大統領に就任した文大統領にとって自身の存在をPRする最初の国際イベントだった。平昌オリンピックには北朝鮮選手団も参加、アイスホッケー南北合同チームも結成された。南北統一を目標に掲げる文政権にとっては、まさに南北融和を象徴する政治ショーとなるはずだった。

文在寅・韓国大統領 ©getty

「一昨年、北朝鮮労働党幹部はこんなシナリオを打ち明けてきました。金正恩はまずミサイル実験を推し進めてその技術を完成させるだろう。そして、2018年の平昌オリンピックを契機に、米朝を中心に対話路線にシフトするだろう、と」(北朝鮮ウォッチャー)

弾道ミサイルを想定した避難訓練を「嫌がらせ」と捉えた

 しかし、日本国内では北朝鮮のミサイル実験に対する危機感は高まり続け、Jアラートやミサイル発射放送を流すなどの対策が取られてきた。そして平昌オリンピックが開幕する寸前の2018年1月22日には、東京都内で初となる弾道ミサイルを想定した避難訓練も行われた。場所は文京区東京ドームシティ周辺で行われ、訓練には近隣の住民や在勤者約300人が参加した。

「北朝鮮が発射するミサイルの標的の一つが日本と言われているなかで、政府主導でこの訓練は行われた。北朝鮮でミサイルが発射されてから緊急情報を伝達するJアラートが流れるまで約3分。ミサイルは8~9分程度で日本に到達することから、避難行動に当てられる時間は5分程度と短い。訓練の必要性はあると、日本政府も考えていたようです」(全国紙社会部記者)

 しかし、この行為が文大統領は気にくわなかったようだ。

「ちょうど平昌オリンピック(2月開幕)前に、安倍政権は北朝鮮を想定したミサイル避難訓練を首都圏エリアで行ったのです。これはオリンピックに対する嫌がらせだ、と韓国政府は考えたのです」(同前)