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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏が解説「香港デモと『1国2制度』という奇策」

池上彰氏が解説「香港デモと『1国2制度』という奇策」

池上さんに聞いてみた。

2019/09/02
note

Q やはり「1国2制度」は難しい?

 香港での逃亡犯条例改正案の撤回などを巡るデモや、香港に隣接する広東省深圳に中国の人民武装警察部隊が駐留する様子などが報じられてきました。やはり「1国2制度」は難しいものでしょうか。(30代・男性・公務員)

A 「1国2制度」という奇策の裏には。

 香港が中国に返還されたのは1997年7月1日。当時の中国は硬直した社会主義体制が続き、貧しい国でした。

 一方、香港は自由な資本主義で経済は発展していました。その香港が、そのまま中国の一部となったら、香港の人たちが逃げ出してしまう。それでは、「金の卵を産む鶏」でなくなってしまう。当時の中国の最高実力者・鄧小平はこう考え、「1国2制度」という奇策を打ち出したのです。

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 また、この発想の裏には、いずれ台湾にも1国2制度を提案し、中国に取り込んでしまおうという意図がありました。

 しかし、いまの香港の様子を見れば、1国2制度がうまくいっていないことは明らかです。台湾も警戒しています。

香港・九竜地区で、警察が発射した催涙弾に対処するデモ隊 ©EPA=時事

 本当に1国2制度を成功させたければ、香港の人たちが、自由に自分たちの代表を選べる制度にしなければならないのですが、中国共産党は、認めないでしょうね。「香港に高度な自治を認める1国2制度」と言っていても、衣の下から鎧が見えているのです。

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