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2019/09/09

1人の政治家として、自分で行動ができる場所にいたい

 参院広島選挙区で2議席独占を狙う自民党の「2人目」として立った河井は、大半の県議から支援を拒まれた。筆者は彼女に会う前に複数の政界関係者に取材したが、みな彼女の悪評を語った。そこまで疎まれる原因を本人に問うと、「私はじゃじゃ馬だから仕方ない」と言って笑い飛ばした。

 以前、同じ広島の亀井静香から国政進出を口説かれて断った。では、なぜ今回は勝負に出たのか――。

「広島では大災害が続き、県議ではやれることが少ないと痛感しました。主人に言えばすぐに国に働き掛けられる。ご飯を食べながら『あのね』とお願いできて便利だけど、それもまどろっこしい。私は1人の政治家として、自分で行動ができる場所にいたいと思った」

 河井は今後、地元広島で夫とは別の場所に個人事務所を構える。「代議士の妻」はいったん卒業するようだ。

 河井の東京事務所が入る参院議員会館2階にこの夏、もう1人の「妻」が拠点を構えた。野党系無所属の参院議員・寺田静(44)である。

寺田静参院議員 ©共同通信社

 夫は、立憲民主党国対委員長特別補佐の衆院議員・寺田学(42・当選5回)。義父は県知事や参院議員を務めた典城。寺田家は秋田を代表する政治家一家なのだ。

排除されてきた女性や健常ではない人の視点を生かす土壌を作りたい

 だが、嫁の寺田には河井のような議員歴はない。夫の選挙を手伝う傍ら、我が子を育ててきた。しかも、絹糸のような小声で訥々としゃべり、キャリア女性特有の気負いを感じさせない。

 立て板に水で語り、「私、おじさんみたい」と自嘲する河井が、永田町に昔から棲息する押し出しの強い「女傑型」だとすれば、寺田は、こざっぱりとしながら包容力のある、数少ない「オアシス型」と言える。

「今、日本が停滞しているのは健康な男性だけで社会や経済を回すから。排除されてきた女性や健常ではない人の視点を生かす土壌を作りたい。だけど、私が子育てや家事を放って、仕事だけしていたら『おじさん』と変わらない、社会は変えられないと思っています」

 男社会で揉まれてきた筆者のような「おじさん」には耳の痛くなる指摘だが、寺田の口から静かに語られるとなぜか頷いてしまう。