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息子という病い――彼らはなぜ事件を起こすのか

2019/09/13

 川崎スクールバス襲撃事件、大阪交番襲撃事件、京都アニメーション放火事件……。令和に入ってから、目を覆うような凶悪事件が相次いでいる。これらの事件には共通点がある。犯人がいずれも「男」なのだ。こうした事件の背景に何があるのか。小誌連載で、男性と女性の「違い」について指摘する作家の橘玲氏が読み解く。

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「男という性」に攻撃性・暴力性が潜んでいる

「男」であることが犯罪リスクを大きく高めることは、統計的に明らかです。アメリカの調査でも、凶悪犯罪者の9割は男で、人種や宗教、生育環境による差はほとんどありませんでした。唯一、はっきり現れたのが、性差。もちろん、男性イコール犯罪者ではありませんが、「男という性」に攻撃性・暴力性が潜んでいることは間違いありません。

 なぜ、男は凶悪犯罪を起こすのか。

 進化論的には、男は「競争する性」、女は「選択する性」として「設計」されています。すべての生き物は、できるだけ多くの子孫(利己的な遺伝子)を後世に残すようにプログラミングされており、哺乳類や鳥類の多くでは、オスが競争し、メスが食料や安全などの「資源=支援」をもっとも多く与えてくれるオスを選ぶのが性戦略の基本です。もちろん、ヒトも例外ではありません。

岩崎隆一容疑者が20人を殺傷した川崎市登戸の現場 ©松本輝一/文藝春秋

 男児は思春期を迎えると、男性ホルモンであるテストステロンのレベルが急上昇します。これによって、他の男たちを押しのけて一人でも多くの女性を獲得するきびしい競争に乗り出すことができるのです。

 テストステロンが筋肉質の身体や彫りの深い顔立ち、低音の声などの「男らしさ」に関係するだけでなく、徒党を組んで競争を好み、支配欲や攻撃性を高めることは様々な研究で確認されています。実際、アメリカで続けて起きた銃乱射事件の犯人の共通点は、もっともテストステロンのレベルが高い「20代の男」です。

40代の凶悪犯罪が多いという日本の「特殊性」

 日本の「特殊性」は、欧米の凶悪犯罪とは異なり、20代より40代の凶悪犯罪が目立つことです。この世代は「団塊ジュニア」(1971~74年生まれ)を中心に、就職氷河期の直撃を受けた「ロストジェネレーション」でもあります。バブル崩壊後の不況期において、いちばん割を食ったのは彼らでした。

 当時の政治・行政の課題は、社会の中核をなす中年の大卒男性、いわゆる「団塊世代」(1947~49年生まれ)の雇用と生活を守ることでした。その結果、皮肉なことに、彼らの子どもたちである団塊ジュニアの雇用が破壊され、非正規など低所得の仕事に就くことを余儀なくされたのです。