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2019/09/13

「中高年ひきこもり調査」の衝撃

 2019年3月、内閣府は「40~64歳のひきこもり状態のひとが全国に61万3000人いる」と発表し、社会に大きな衝撃を与えましたが、その4分の3は男性です。

 対照的に、いまの日本経済は空前の人手不足で、20代の就職は超売り手市場。大卒なら誰でも正社員になれる彼らの生活満足度がきわめて高いのも当然でしょう。一方的に割を食った団塊ジュニアとは、その境遇に雲泥の差があります。

 ロスジェネ世代は仕事=社会から排除されて孤立しやすいのに加えて、男の場合、「性愛」からも排除されてしまいます。報道によれば、凶悪事件の犯人たちに、妻や恋人などがいた形跡はありません。

京アニ放火事件を起こした青葉真司容疑者

 未婚率の上昇が懸念されていますが、実は男女でかなりの差があります。50歳時点で一度も結婚したことのない割合は、2015年時点の調査で、女性14.1%に対して男性はほぼ倍の23.4%です。

「持たざる者」は「モテない」

 なぜ男の未婚率だけがこれほど高いのか。その理由は、結婚と離婚を繰り返すことで、一部の男が複数の女と結婚しているからです。先進国はどこも法的には一夫一妻制ですが、その実態は「時間差の一夫多妻制」なのです。

 婚活サイトのビッグデータで明らかなように、女がモテる最大の要素が「若さ」で、男は「カネ」です。恋愛の基本形はカネとエロスの交換、すなわち売春です。

 この「男女の性愛の非対称性」によって、男の場合、社会的・経済的な成功者=「持てる者」は、複数の女から「モテる者」になる一方で、金も権力もない「持たざる者」は、女性の関心を惹くことができず「モテない」のです。これは、ネットスラングで「モテ/非モテ問題」と呼ばれます。

京都アニメーション放火事件の現場 ©時事通信社

 低所得の男は社会的・経済的に排除され、同時に性愛からも排除されることで、人生を丸ごと否定されてしまいます。ところが、貧困問題が声高に叫ばれる一方で、経済格差が性愛格差に直結することは、これまでタブーとされてきました。

 男の分断は、日本に限ったことではありません。アメリカでは、「非モテ」の男性たちは「インセル(Incel)」と呼ばれます。「Involuntary celibate(非自発的禁欲)」の略で、ネット上の自虐的な俗語として急速に広まりました。