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三井住友フィナンシャルグループ社長インタビュー「従来の銀行の枠組みを壊したい」

週刊文春編集局長のインタビューに語った展望

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「カラを破ろう」のスローガンを掲げるSMBCグループ。なぜ銀行は変わるべきなのか、新しい未来を描く新戦略とは何か。太田純社長が明かすイノベーション改革とは……。(聞き手:週刊文春編集局長・新谷学)

従来の銀行ビジネスの枠組みを壊したい

新谷 太田さんは今年四月に社長に就任されてから、矢継ぎ早に改革の手を打たれています。どのような覚悟で改革に臨まれているのでしょうか。

太田 強い危機感がありますね。銀行というのは基本的にはGDPビジネスなんですね。日本経済のGDPが低成長時代を迎えているなかで、今後日本の国内で銀行が大きく伸びていくということは考えづらい。ですから従来の銀行ビジネスという枠組みを壊していかないと、もう生き残っていけないという危機感が強くありますね。

新谷 今朝、三井住友銀行本店に出社されてくる社員の方を拝見して驚きました。デニムの方とかチノパンの方とか、あまり銀行員らしからぬ方々が沢山いる。本店勤務の方のドレスコードを変えたとお聞きしました。

太田 社員にはより自由な雰囲気の中で新しい発想をしてほしいということで、服装を自由にしました。面白かったのは、初日に浴衣で来た人間がいた。浴衣の彼が経営会議の資料を配っていると、それを見た証券会社の社長が怒り出した。これはまずいと思っていたら、「着付けがなっとらん」と言う。あ、そっちですかとホッとしました(笑)。

太田純
1958年生まれ。82年京都大学法学部卒業後、旧住友銀行入行。三井住友銀行専務、三井住友フィナンシャルグループのITイノベーション推進部担当役員、副社長・グループCFOなどを経て、2019年4月から現職
太田純
1958年生まれ。82年京都大学法学部卒業後、旧住友銀行入行。三井住友銀行専務、三井住友フィナンシャルグループのITイノベーション推進部担当役員、副社長・グループCFOなどを経て、2019年4月から現職

新谷 謹厳実直という銀行のイメージがずいぶん変わります。

太田 そうですね。社員のマインドセットを変えたい、と考えて取組んでいます。ただ、お客様によってはけしからんという人もいらっしゃるので、場面に応じてちゃんと対応してくださいよとは言っています。

新谷 個人営業担当者のノルマも撤廃されたと伺っております。

太田 個人に営業収益目標を課しますと、大部分はそうではないが一部で目標を達成するがために、本来お客様本位で対応すべきところをそうじゃなくなってしまうケースがある。それを防ぐために個人ノルマを廃止しました。社員にはまずお客様本位の仕事をして欲しい。例えばご高齢の方にどういうふうなサービスが出来るのか。これまでは、どのような商品を提供出来るかという発想だけでした。しかし、これからはトータルなサービスを考えないといけない。お金を中心としながら、介護、老後資金、遺言等いろんな安心をパッケージで提供できるようなサービスが必要になっていくのだと思います。

新谷 「カラを破ろう」というスローガンを掲げて社員に徹底されていると伺っておりますが、例えば新しいビジネスモデルとして具体的にどういったものをお考えになっているんですか。

太田 今後銀行が進む方向性は三つあると思っています。〈情報産業化〉、〈プラットフォーマー化〉、〈ソリューションプロバイダ化〉の三つです。銀行は単にお金を貸したり預金を預かったりするビジネスから脱却しないといけない。この三つの方向性に対して我々がいかにスピーディーに変わっていけるかというところがキーポイントとなる。

新谷 改革には痛みが伴うこともあると思います。失敗のリスクについてはどうお考えですか。

太田 「向こう傷を問わない」という言葉もありましたが、私は常に「失敗するなら早くしてくれ」と言っています。早く動いて失敗したとしても、その失敗を次の成功に結びつけてくれればいい。アジャイルと言っていますが、まず敏速であれと。

新谷 特にビジネスの主戦場がデジタルに移ってくると、結果が出るのも早いんですよね。

太田 まさにそれがデジタル時代の肝なのです。私が直接出ている会議でも、新しい事業などをやりたい社員にプレゼンテーションをしてもらうように仕向けています。面白いと思ったらその場で「やれ」と言って、すぐに人と予算を付ける。

自ら新しい社長を“製造”していく

新谷学
1964年生まれ。89年早稲田大学卒業後、文藝春秋入社。『Number』『マルコポーロ』『月刊文藝春秋』などを経て、2012年『週刊文春』編集長に就任。数々のスクープで“文春砲”の異名をとる。18年7月から現職
新谷学
1964年生まれ。89年早稲田大学卒業後、文藝春秋入社。『Number』『マルコポーロ』『月刊文藝春秋』などを経て、2012年『週刊文春』編集長に就任。数々のスクープで“文春砲”の異名をとる。18年7月から現職

新谷 その場で即断即決ですか。

太田 私は社長製造業をやる、と周囲には言っています。既に新しい会社を七社立ち上げました。三年ほど前、NECさんとのジョイントベンチャーで「ブリースコーポレーション」という会社を作り、サービスを開始しました。例えばコンビニで電気料金の伝票を持って支払いをしますよね。ブリースが開発したのは、電気料金のバーコードをスマホに送り、スマホだけで支払いが出来る「ペイスル」というシステム。このサービスにより、伝票を郵送するコストが削減でき、コンビニ側も紙の伝票がなくなるので処理がすごく楽になる。将来的にSMBCグループはいろんな所と融合する可能性があると思っています。

新谷 ぜひ『週刊文春』とも融合して頂きたいですね(笑)。

太田 あと「ポラリファイ」という生体認証の会社も始めました。これはスマホで顔や指紋などで生体認証をする会社で、例えばオンライン送金するのにいちいちワンタイムパスワードが要らなくなる。生体認証で本人確認ができてしまう。これからが楽しみなビジネスが続々と出てきています。

かつて“銀行”と呼ばれた会社へ

新谷 将来的には、ひょっとしたら銀行という看板がとれるかもしれないですね。

太田 いま当行の新卒採用のホームページには、「かつては、銀行と呼ばれていた。」と書いてあるんですよ(笑)。

 
 

新谷 太田さんが理想とするリーダー像はありますか。

太田 私が京都大学でアメフトをやっていた当時、水野弥一さんというカリスマ監督がいました。水野さんの手法は私にとって衝撃的でした。

新谷 恩師から影響を。

太田 選手に対して明確な目的意識を植え付けて、その目的を達成するためのハードな練習を課していく。すごく怖い監督でしたが全員を怒鳴るわけではないんです。怒って伸ばす人と、おだてて伸ばす人を見分け、きめ細かく指導をしていく。カリスマって繊細なんだなと、勉強になりました。いま私は社長になり、全世界で十万人の従業員がいます。一人ひとりを見るのは難しいですが、個人を尊重する組織編成を行うことが課せられた任務だと思っています。

新谷 SMBCグループの最大の強みは何でしょうか。

太田 傘下にはカード会社、リース会社、証券会社など多くのグループ会社があります。それぞれの会社が業界のトップランナーです。グループの総合力というのが最大の強みでしょうね。

新谷 会社の未来像はどのように描かれていますか。

太田 社員が自由な発想で夢を追求し、結果としてそれが新しいサービスとか商品を産む。それが皆さんに受け入れられていくという好循環が生まれるような会社にしたい。一言で言うと「イノベーティブな会社」です。改革でSMBCグループがどのような会社に様変わりするのか、私自身とても楽しみにしているんですよ。

右:太田純氏(三井住友フィナンシャルグループ 社長・グループCEO) 
左(聞き手):新谷学(『週刊文春』編集局長)
右:太田純氏(三井住友フィナンシャルグループ 社長・グループCEO) 
左(聞き手):新谷学(『週刊文春』編集局長)

Text:Shinichiro Akaishi
Photograph:Hirofumi Kamaya

出典元

菅原一秀経産相「秘書給与ピンハネ」「有権者買収」を告発する

2019年10月17日号

2019年10月10日 発売

定価440円(税込)