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「史実と違う」「なつの行儀が」アンチも見るのをやめられない『なつぞら』の底力

女性群像劇が知らしめた、日本アニメ黎明期の"Hidden Figures"

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2019/09/28
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 朝の連続テレビ小説『なつぞら』放送の後を受けるNHKの朝の情報番組『あさイチ』で、今年4月の放送で本当にあった一幕である。その日の特集は「平成から令和へ 新しい夫婦のカタチ」。事実婚や週末婚、そして専業主夫という多様な形の夫婦を取り上げ、変化する社会について考えるというNHKらしい穏当な企画だった。

「専業主婦イコール時代遅れと決めつけるの、やめませんか」

 企画に賛同するリベラルな視聴者からの反応をいくつか紹介した後に、女性アナウンサーが神妙な顔でメールを読み上げた。

「……そして、専業主婦の方からもあさイチにメールをたくさん頂きました。XX県30代のXXさんです。『専業主婦です。私は家事が得意で大好きです。夫には外で働いてもらって、家では子供の相手をきちんとしてくれたら、家事はしてくれなくていいと言っています。(中略)家庭はこれで回っていますし、幸せです。専業主婦イコール時代遅れ、古くさいと決めつけるの、やめませんか』」。

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『なつぞら』ヒロイン・なつを演じた広瀬すず ©AFLO

 スタジオに並ぶ男女ゲストの表情には明らかにある種の緊張が走っていた。そこまでの放送の中で、専業主婦に対して強く攻撃的な発言があったわけではない。それでも「私が古くさくて時代遅れだと決めつけないでほしい」という反応がNHKにはあったということなのだろう。

次作『スカーレット』のSNSでも似た騒動が

『なつぞら』の次作101作目、戸田恵梨香主演の朝ドラ『スカーレット』の公式HPに対しても似たような騒動がSNSで起きた。陶芸家をモデルにした主人公を「究極の働き女子」と表現したことに対して、「専業主婦だって働いている」という批判がNHKアカウントへの@マーク付きでツイッターに投稿され、300以上RTされたのだ。

批判された『スカーレット』公式ツイート


 過剰な反応に思えた。その論理で言えば「働く女性」「女性の社会進出」という言葉さえおいそれと使えなくなってしまうだろう。しかし、朝の連続テレビ小説というコンテンツが放送され、視聴率で厳しくジャッジされるのはそういう場所である。