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「監察医 朝顔」「ルパンの娘」……あんなに低迷していたフジのドラマは、なぜ“元気”になったのか

2019/09/30
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 諸行無常とはこのことか。一時期、あんなに低迷していたフジテレビが嘘のように元気を盛り返して来た。2019年7月期の連ドラ、月9「監察医  朝顔」は各話オール二桁で、最終回は13.3%。木曜劇場「ルパンの娘」は二桁回がなかったものの、回を増すごとに盛り上がり、最終回が最高の9.8%と有終の美を飾った。いわゆる視聴熱の高いドラマで、SNSでは毎週トレンド入りしていた。

「監察医 朝顔」は漫画が原作で、震災で母が行方不明になった刑事の父(時任三郎)と監察医の娘(上野樹里)が解決しない思いを抱えながらそれでも日々の生活と仕事を続けて生きていく姿を描く。漫画では母は阪神淡路大震災で亡くなった設定だったが、ドラマでは変更が加えられた。

上野樹里 ©文藝春秋

なにかと早すぎるフジテレビが立ち止まった!?

 基本線は一話完結の法医学ミステリーだが、まるで「よるの朝ドラ」のようにホームドラマ軸もていねいに描かれたところが新鮮で、上野樹里演じる主人公が風間俊介演じる恋人かつ父の部下と結婚するとき、三つ指を突いて父にお礼を言うシーンなど昭和のホームドラマを彷彿とさせた。これが「楽しくなければテレビじゃない」と浮かれていたフジテレビなのか、何かといえば主人公たちが集ってやたら豪華な飲食をしまくっていたフジテレビドラマ(あくまでイメージですが)なのか……と目を疑ったが、時代の変化にフジテレビが寄り添ったということであろう。おりしも消費税があがり、外で食べると10%、持ち帰れば8%となり、これから家でご飯を食べる人たちがますます増えていくことが予想にかたくない時代にぴったりの家ごはんのシーンが満載。

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 以前「フジテレビはなにかと早すぎる」という記事を書いたことがあるのだが、ようやく立ち止まってくれた気がしてならない。それは冗談として、家族、職場、不慮の事故で亡くなった方々……すべての人達への思いやりにあふれたドラマは深く染みた。