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京都府立医大捜査 山口組系組長と蜜月の陰に有名学長

2017/02/16

genre : ニュース, 社会

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 2月14日夜、京都市上京区にある京都府立医科大学。管理棟5階の会議室には新聞やテレビの記者でごった返していた。

 府立医科大学附属病院側と記者とのやり取りが1時間ほど続いた後、筆者は手をあげて、こう質問した。

「高山受刑者の腎移植手術が行われた2014年7月の1カ月前に、吉川学長と高山受刑者が病院外で、個人的に、会われていたという情報を京都府警も把握しているんですが、事実ですか?」

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2月14日夜に行われた記者会見 (C)西岡研介

 府立医科大学と附属病院に京都府警の家宅捜索が入ったのは、この9時間前のことだった。捜索は記者会見中も続いていた。
捜索の容疑は〈虚偽有印公文書作成罪〉。捜査関係者が強制捜査に至った経緯を解説する。

「京都の建設業団体幹部を恐喝した事件で、2015年6月に最高裁で懲役8年の実刑判決を受けた指定暴力団山口組系『淡海一家』総長、高山義友希は『腎臓の持病』を理由に判決確定後から今日まで1年半以上にわたって収監を免れていた。その高山が治療を受けていたのが、府立医大附属病院だった」

 高山受刑者(60)は、京都を地盤とする指定暴力団「会津小鉄会」の四代目、故高山登久太郎会長の実子で、父の引退後、山口組系弘道会に入り、淡海一家を設立。2009年に山口組の直参に昇格した。捜査関係者が続ける。

附属病院が提出した「ウソの回答書」

「高山が長らく腎臓病を患っていたのは事実だ。しかし保釈中の2014年7月に、親族から提供された腎臓の移植手術を受け、数カ月後には収監に耐えられるまでに回復した。手術後、大阪高検は数回にわたって、附属病院に対し〈高山が収監に耐えられる(まで回復した)か否か〉を照会したが、附属病院は〈ウイルス性の腎炎のおそれがあり収監には耐えられない〉などと虚偽の内容を記述した回答書を高検に提出していた」

 つまり、大学病院の医師たちが、ヤクザの親分のために、お上にウソをついていた疑いがあるというわけだ。が、移植手術から2年近く経っても高山受刑者の病状が回復しないことを不審に思った大阪高検が昨年6月、京都府警に健康状態を問い合わせたことから、今回の捜査が始まったという。捜査関係者が続ける。

「大阪高検から照会を受けた府警が、高山周辺から情報収集したところ、健康状態は良好であることが分かった。にもかかわらず、府立医大から〈収監に耐えられない〉との意見書が提出され続けていることに疑念を抱いた府警は、府立医大の内偵に入った。府立医大内部から極秘に高山総長の電子カルテ(従来、医師が診察の経過を記入していた紙のカルテを電子データ化し、病院のデータベースに保存したもの)の任意提出を受けたところ、腎機能の目安となるクレアチニンの数値が、電カル上では〈1.1〉などと正常値が記録されていた。ところが、同時期に高検に提出された回答書には〈10.6〉などと実際の10倍もの異常値が記されていたことが分かった。回答書は高山の主治医である吉村了勇病院長(64)名で提出されていたのだが、実際に意見書を書いたとされるのは、吉村病院長が教授を務める移植・一般外科の講師(44歳)。そこで府警がこの講師を任意で聴取したところ、『吉村病院長の指示で書かされた』などと供述したことなどから、強制捜査に踏み切った」

京都府立医大に家宅捜索に入る京都府警の捜査員 (C)共同通信社

 そして大阪高検が高山総長を収監するのと同時に、京都府警は附属病院の家宅捜索に着手。講師の勤務する移植・一般外科や病院長室だけでなく、府立医大のトップ、吉川敏一学長(69)の学長室、さらには学長の自宅にまで及んだという。捜査関係者がさらに続ける。

「今回の事件で、府警や京都地検は、吉川学長の関与も疑っている。というのも、府警が吉村病院長や医師の周辺を洗ったところ、高山が移植手術を受ける前段階で、吉村病院長や医師と、高山との病院外での接点は見つからなかった。ところが、府警がさらに内偵を進めたところ、移植手術が行われる約1カ月前、吉川学長が高山と院外で接触していたことが分かった」