文春オンライン

追悼・金田正一 愛すべき“カネやん”のヒヤヒヤするけど憎めないエピソード

2019/10/08
note

 金田正一さんが亡くなった。享年86。現役時代は国鉄スワローズ~読売ジャイアンツを通じて通算400勝298敗、365完投、奪三振4490、投球回数5526と2/3。打者としても38本塁打(うち2本は代打)を放ち、ピッチャーなのに8回も敬遠されるなど、叩き出した数字のすべてが規格外。まさに球界のレジェンドオブレジェンドである。

金田正一さん ©文藝春秋

観る者をヒヤヒヤさせる「カネやん」の記憶

 記録以外にもその徹底した健康管理術や走り込みを中心とした練習法など逸話の多い金田さんだが、引退したのは50年前の昭和44年なので、現役時代を知る方は若くても50代後半以上ということになる。それより下の世代の野球ファンにとっては、何かというと判定に抗議し、乱闘騒ぎをしょっちゅう起こし、時には審判や相手選手に蹴りを入れた2度のロッテ監督時代、自らが立ち上げた名球会入りする選手に記念のブレザーを着せてあげる姿、そしていつも豪放磊落にふるまう解説者およびタレントとしての「カネやん」の方が記憶に残っているのではないか。近年こそ機会は減ったとは言え、CMやトーク番組、たまに『サンデーモーニング』に出演しては相も変わらずの歯に衣着せぬ発言で観る者をもヒヤヒヤさせていた。カネやん出演時はハリーこと張本勲さんの口数が少なくなってしまうほどだった。

©文藝春秋

ADVERTISEMENT

 現役時代から口が達者で交友関係も広かったカネやんだけに、引退後はお決まりの野球評論家の枠に納まりきる訳もなくプロダクション〈カネダ企画〉を立ち上げるなど幅広く活動する。そのひとつが報知新聞(現・スポーツ報知)に連載していた各界の著名人との対談企画。実に40名との対談の模様が『失礼!金田です』(昭和46年、報知新聞社刊)という本にまとめられているのだが、これがめっぽう面白く、タレント・カネやんの礎になった感があるので追悼の意を込めて読み返してみたい。