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批判殺到で大学授業は中止に

 韓国メディアの報道が本格化したのは、発言から4日が経った9月23日ごろからだった。まず、延世大学の学生自治会や同窓会などが柳氏の発言に猛反発して、「人類史上、最も醜悪な国家暴力の被害者(元慰安婦)を『自発的売春』などと罵倒し、あざ笑った」として、大学に柳氏の罷免を要求。さらに、市民団体「庶民民生対策委員会」が、名誉毀損や虚偽事実流布、セクハラの疑いで柳氏を告発した。

 今回の柳氏の発言は、左派系紙の「ハンギョレ」だけでなく、保守系の「中央日報」なども紙面やネット上で報道。さらにテレビもほぼ全局が報じたが、特に非難が集中しているのは、柳氏の「知りたいなら、一度やってみますか」という発言だ。

 柳氏は「一度調べてみればどうか」という研究を勧める意図だったと釈明したのだが、この発言は当然ながら「女子学生へのセクハラ」と受け取られた。「売春を勧める発言だとの指摘は言語道断だ」と柳氏は反論したものの後の祭りだった。

 特に、慰安婦報道に熱心なハンギョレ紙などは、社説でも「事実歪曲で、糾弾されるのは当然」「基本的礼儀さえ知らない。教授を即刻、辞任すべきだ」(9月23日付)と柳氏批判に熱を上げている。

 延世大学側は、学生や世論の批判や要求を受けて、「遺憾の意」を表明。柳氏の授業を中止とし、この発言の詳細についての調査を進めている。また、市民団体の告発を受け、ソウル西部地検は、警察を通じての捜査に入っている。

大統領就任前、慰安婦問題の抗議集会でスピーチする文在寅氏 ©共同通信社

これまでも左派の“標的”

 渦中の人物となった柳氏とは、どんな人物なのだろうか。

 柳氏は、1955年生まれで、韓国中部の慶尚北道安東出身。米イリノイ大学大学院で博士号を取得。延世大学大学院で地域学の主任教授を務めるほか、同大学サイバー教育支援センター所長、社会学科長、朴正熙記念財団理事、李承晩研究院院長、アジア研究基金の事務総長などを歴任している。

 2017年には、韓国の最大野党で保守系の自由韓国党において「革新委員長」に就任しているが、政治家ではない。純然たる社会学者だ。朴槿恵前大統領の弾劾を「(左派による)政治的な報復だ」と批判しており、思想・信条的には保守派に属する。

 そもそも柳氏の保守性は左派から毛嫌いされている。その上で、韓国で議論することすら許されない“聖域”と化している慰安婦問題に真っ向から持論を展開したことで、左派としては格好の標的となった。

 柳氏はかつて、京郷新聞主催の座談会で「左派、進歩陣営はわれわれに『極右、守旧』と言うが、極右とはテロを犯した安重根(伊藤博文の暗殺犯)のような者のことであり、私は鉛筆1本も投げられない」と発言し批判された。また、歴史教科書の国定化に賛同する「正しい歴史教科書を支持する教授の集い」のメンバーとして活動したことも「代表的な右派人物」と評される理由だ。

 さらには、2004~10年に事務総長を務めたアジア研究基金が「(韓国で右翼の大物とされる)笹川良一が設立した日本財団の資金で作られた財団である」(ハンギョレ紙)とされ、柳氏は「歴史歪曲」「破廉恥な妄言」をする人物と決めつけられている。2年前に「革新委員長」として柳氏を招いた自由韓国党でさえ、今回の発言は「不適切だ」として遺憾の意を表明している。