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1億ウォンの損害賠償請求

 柳氏は「売春が貧しさゆえの、やむを得ぬ事情による選択だったと説明したが、一部の学生が受け入れず同じ質問を繰り返した」と真意を説明し、「売春を(女子学生に)勧める発言でもない。非がないのに謝罪はできない」と主張し、信念を曲げていない。講義での発言が録音されていたことなど、不可解な点もいくつかうかがえるのだが、状況は日々、柳氏に不利な方向に向かっている。

 柳氏は講義で、元慰安婦を支援する正義連を「北朝鮮と関連した団体」「元慰安婦を教育して、新たな記憶を作った。元慰安婦を利用した」「問題に介入して国家的被害者という考えを持たせた」などと批判した。

 正義連に対する柳氏の認識はあながち外れているとは言えないと筆者は考えている。正義連は毎週水曜日にソウルの日本大使館前で、時には高齢の元慰安婦を動員し、慰安婦問題をめぐる日本への抗議集会を続けている。

「法的措置」を公言していた正義連は、ついに10月1日、柳氏を名誉毀損でソウル西部地検に告訴。1億ウォン(約900万円)の損害賠償請求訴訟も合わせて起こした。正義連はさらに、「その家族の意向に沿い、今後さらなる法的措置対応もとる」「名誉毀損行為が処罰されるように法的制度を設ける必要がある」と訴えている。大使館前の集会でも、柳氏の発言報道があった直後の9月25日、翌週の10月2日に、柳氏を痛烈に非難した。

ソウルの日本大使館前の慰安婦像横で安倍政権を批判するプラカードを持つ抗議集会参加者(8月14日) ©NNA/共同通信イメージズ

「慰安婦は生き神様なのか」

 韓国では慰安婦の存在は絶対的で、神聖視されもしている。慰安婦やいわゆる徴用工などの強制性を否定し、韓国でこの夏、ベストセラーとなった『反日種族主義』の共同著者である李宇衍・落星台経済研究所研究委員は、フェイスブックへの投稿文で、柳氏の発言は「現在の状況を念頭に置き展開されたあり得る推論だ」と指摘。「慰安婦は生き神様なのか」と疑問を呈した。

 すでに左派から批判の標的にされ、物理的な攻撃も受けていた李氏。今回、柳氏を擁護したことで、「暴言を吐いた」と再度批判に晒されている。李氏は以前から、慰安婦問題をめぐって正義連に公開討論を求めているが、正義連はその要求を無視している。

 柳氏や李氏のような発言をすれば、韓国では必ず正義連などの市民団体を中心とした“社会的制裁”を受ける。慰安婦問題についての学術書『帝国の慰安婦』の著者である朴裕河・世宗大学教授が代表例だ。朴氏は元慰安婦の名誉を毀損したとして、民事裁判で敗訴が確定し、刑事裁判は1審無罪、2審は逆転有罪となっている。

 韓国では、慰安婦問題をめぐり元慰安婦はともかく、支援団体の意に沿わない主張をした学者ら専門家は、間違いなく吊し上げられる。学生らから非難を受けた末に、大学を追われた学者もいる。被告人とされた朴氏の裁判は本人が法廷で訴えていたように「魔女狩り」も同然だった。

 状況は違っても、主義、主張がどうであれ、韓国では慰安婦問題への「異論」は許されず、即刻、敵視され、非難の的となる。

 社会的に抹殺されることを覚悟の上で、柳氏は研究者として、それでも主張を翻さない構えのようだ。

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