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「勝ちたいか!」「ついてこられるか?」 ラグビー映画『スクール・ウォーズ』に見る名指導者の条件

「One for All, All for One」だけじゃない

2019/10/14
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 カマテ! カマテ! カオラ! カオラ! 

 ラグビーワールドカップ、やっぱりアガりにアガりますね。疾走して激突する巨漢たち、そんな激闘するさまからジンジンと伝わってくる選手同士や彼らと指導者の絆。いちいち熱くて、ついついハカってしまいます。でも、そんなワールドカップも中盤に入ると観ているこちらのテンションのボルトが少し緩みがちになる瞬間が……。それはマズイというわけで、ラグビー魂を注入してくれる映画をご紹介したいと思います!

10月6日、ハカを踊るニュージーランド代表 ©AFP/AFLO

日本と南アフリカ それぞれに名指導者あり

 フィールドに上げるのは、名作ドラマ『スクール☆ウォーズ 泣き虫先生の7年戦争』(84)を照英主演で映画化した『スクール・ウォーズ/HERO』(04、以下『スクール・ウォーズ』)と、クリント・イーストウッドが監督を務めた『インビクタス/負けざる者たち』(09、以下『インビクタス』)。

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ネルソン・マンデラを演じたモーガン・フリーマン ©Gallo Images/getty

 映画版『スクール・ウォーズ』は荒廃した工業高校のラグビー部を立て直す熱血教師・山上修治(モデルは日本代表フランカーの経歴を誇る、元京都市立伏見工業高等学校ラグビー部監督・山口良治氏)、『インビクタス』は弱小チームであった90年代の南ア代表チームをもはや監督状態でワールドカップ優勝へと導いたネルソン・マンデラ大統領と主将フランソワ・ピナールがそれぞれ主人公。彼らの名指導者ぶり、それがもたらす奇跡が観る者の胸にバシッとトライしてくるのです。

 山上が赴任した工業高校は、生徒が廊下をバイクで突っ走り、教師が縛られて3階の窓からブラ下げられたり、背中に火をつけられたりと無法地帯状態で、その主犯となっているのがすべてラグビー部員。一方の南アフリカは人種隔離政策アパルトヘイトが撤廃されて黒人大統領マンデラが就任したものの、虐げられてきた黒人が白人に牙を剥きかけ、白人たちが警戒している状態。