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連載「イラク水滸伝」外伝

アウトローの集うイラク湿地帯は、豪傑と怪人たちの巣窟だった

「イラク水滸伝」外伝――第7回:元反政府ゲリラの首領からオカルト好きまで

2019/10/26

genre : ライフ, , 国際

 メソポタミア文明が誕生した巨大湿地帯に、豪傑たちが逃げ込んで暮らした“梁山泊”があった! 辺境作家・高野秀行氏は、ティグリス川とユーフラテス川の合流地点にあるこの湿地帯(アフワール)を次なる旅の目的地と定め、混沌としたイラクの地へと向かった。

 現在、「オール讀物」で連載中の「イラク水滸伝」では書き切れなかった「もう一つの物語」を写真と動画を交えて伝えていきたい。

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 イラクの湿地帯は大昔から戦に敗れた者、体制側と戦う者、国家の枠組みからあぶれたアウトローやマイノリティの集う場所だった。この連載を「イラク水滸伝」と名付けた所以である。今も湿地帯では水滸伝に登場するような豪傑や怪人にしばしば出会う。そのうち、何人かをご紹介しよう。

「湿地王」の異名をとる豪傑

◆アブデル・マホウド・カリーム・アル=モハメダーウィ

「湿地王」ことアブデル・マホウド・カリーム・アル=モハメダーウィ(写真右から2番目)

 かつてイラクの湿地帯で最も恐れられていた豪傑。フセイン政権時代の1980年代、政治運動を行ったかどで投獄されたが、獄中で毛沢東やチェ・ゲバラの本を読んで革命思想に目覚め、出獄後は湿地帯に入って、武力闘争を開始した。初めは左翼ゲリラだったが、後にイスラム主義者に転向。何度も政府軍を撃退し、「湿地王」という異名をとる。現在はイラン国境に近い町アマーラで、半ば引退したような生活を送っている。

 
 

 湿地王のオフィスにはゲリラ時代の写真が額に入れて飾られていた。彼は身の安全のため決して写真を撮らせなかったというので、彼の仲間や部下たちの写真である。

 

 現代において、アラブの民族衣装を着たゲリラも珍しいが、そういう人たちが湿地帯で活躍している様子はさらに珍しい。