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皇族の減少で変わる「即位礼正殿の儀」……注目は“天皇陛下の隣席”と“文在寅大統領の親書”

今回の特徴は「簡素化と両陛下の負担軽減」にある

2019/10/21

 天皇の即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」(即位の礼)と、それを祝賀する「饗宴の儀」が22日からもたれる。前回(1990年11月12日)の即位の礼を上回る174カ国の王族、元首、首脳、国際機関の使節が参列する予定で、中東情勢の緊迫などもあって、東京を舞台に「即位の礼外交」も展開される。前回と比べた時の今回の一連の儀式の特徴は、簡素化と両陛下の負担軽減だ。

天皇皇后両陛下 ©JMPA

静寂の中で行われる30分の儀式

 元号が代わって半年足らずの短い期間に、新天皇の即位の礼が挙行されるのは、近代以降の日本の歴史で初めてだ。生前退位が行われたからこそで、前回の明仁天皇の即位の礼は、昭和天皇が前年の89年1月に亡くなった後、服喪の期間を置いて1年10カ月後に行われた。ちなみに昭和天皇の即位の礼も、大正天皇の逝去(1926年12月25日)から2年近く後の28年11月に行われている。

 昭和天皇が亡くなられた喪失感がまだ尾を引いていた前回の即位の礼と比べ、上皇、上皇后がご健在の今回はそうした喪失感はない。前回、明仁天皇、美智子皇后にあいさつする外国の祝賀使節はまず冒頭、お悔やみを告げた。しかし今回は祝意と慶賀の伝達となり、明るい空気が全体を支配する。

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 即位の礼は午後1時に始まり、安倍晋三首相、衆参両院議長、最高裁判所長官の三権の長のほか、外国の賓客や国内の各界代表2000人が参列する。

前回の「即位の礼」。天皇は高御座に、皇后は御帳台に登壇される ©AFLO

 天皇は黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)と呼ばれる装束に身を包み、宮殿「松の間」に設置された高御座(たかみくら)に、十二単(ひとえ)姿の皇后は御帳台(みちょうだい)に登壇される。鉦(しょう=かね)の合図で参列者が起立し、高御座と御帳台の御帳が開けられると鼓(こ=太鼓)が響き、参列者は礼をする。

 安倍首相が進み出て万歳を三唱し、これに参列者が唱和する。高御座と御帳台の御帳が再び閉じられると鉦が鳴り、参列者は着席。両陛下が退出して終わる。この間、30分。音楽も説明もまったくない静寂の中での儀式だ。

一切の説明がなく、3つの音だけで式は終了

 前回の即位の礼に参列した指揮者の故・朝比奈隆さんは「もっといかめしい感じの儀式と思っていたが、簡素でさわやかな印象だった。……一切の説明がなく、鉦のカーンで起立、鼓のポンで礼、また鉦で着席と、3つの音だけで式が終了したのが何よりもよかった」と音楽家らしい感想を語っている。

 儀式では、皇位のしるしとされる三種の神器のうち剣、璽(じ=まがたま)を侍従が捧げ持ち、旛(ばん)と呼ばれる赤、黄、緑、青の色鮮やかなのぼりが「松の間」を臨む中庭に立てられる。古装束に身を包んだ宮内庁職員も弓や太刀を持って威儀を正し、平安朝絵巻さながらの光景が繰り広げられる。