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連載この鉄道がすごい

「まるで揺りかご」新幹線で導入されたグランクラスの「高級」鉄道サービス革命

東京から新函館北斗へ行ってみた

2019/10/27

genre : ライフ,

「ああ、よく眠れた」

 これがグランクラスで新函館北斗駅に降り立った私の感想だ。東京駅8時20分発の「はやぶさ5号」に乗って、定刻12時18分に到着。所要時間は3時間58分。東北新幹線の最上級の座席に乗ったからには「寝たらもったいない」と思うけれども、寝ちゃったんだから仕方ない。大宮駅を過ぎたあたりから記憶が曖昧だ。仙台駅と盛岡駅停車は気づいたけれど、駅間の景色を見ていない。

先頭車両のグランクラスに乗り込む

 東京駅を発車直後、アテンダントさんが配った無料の和軽食を食べて、青森産のシードルを飲みつつ、45度まで深く倒れるシートに横たわる。レッグレストを持ち上げれば、ほぼ仰向け。まるで揺りかごのような、と言いたいけれど、揺りかごの経験がなかった。ええと、そうだな。家具店で試した高級マッサージチェアの、マッサージ機能がないやつ。ああ、恥ずかしい。お里が知れる。要するに居心地が良くて、お酒も弱いものだから、すとんと眠りに落ちてしまった。

この寝心地は今までにない体験

 新青森駅の手前で目覚め、アテンダントさんにホットコーヒーをもらって茶菓をいただく。ここから先は寝ちゃいけない。新青森から先は北海道新幹線だ。私にとって初めて乗る路線で、この区間を乗ればJR全路線乗車を達成する。その記念の意味を込めて「グランクラス」を奮発した。しかしこの寝心地、今までにない体験だった。満足だ。

 

 ふだんはグリーン車すら手を出さない私にとって、グランクラスは分不相応な贅沢だ。帰路はもちろん普通車指定席。しかもインターネット予約サービス「えきねっと」の「お先にトクだ値スペシャル」で半額である。往路はグランクラスで38280円、復路は普通車指定席の半額で11340円。平均すると24810円となり、普通車指定席の片道料金22690円よりやや高い程度。こんな計算をして贅沢感を打ち消してしまうところが小市民的だなあ。

グリーン車とは別格のグランクラス

「グランクラス」はJR東日本が提供する最上級の座席サービスだ。2011年3月、東北新幹線の次世代車両「E5系」の10号車に設定され、最速列車「はやぶさ」登場に合わせてスタートした。構想発表時は従来のグリーン車よりもさらに上質なサービスを提供する「スーパーグリーン車」だったが、正式サービス名は「グランクラス」。あえてグリーン車を連想させずに別格だと思わせる。

 本革を張った座席は電動リクライニングシートだ。バックシェルと呼ばれる外殻を採用し、後席を気にせずに背を倒せる。前述したように、レッグレストも電動で持ち上がり、その先にはフットレストも伸びる。ヘッドレストは手動で上下する。これはE5系の普通車でも採用されていて、ヘッドレストの横にアーム式の読書灯がある。座席の足下にはスリッパと車内誌が用意されている。私は頼まなかったけれど、靴べら、アイマスク、ブランケットはアテンダントさんが用意してくれる。