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2019/10/29

source : 文藝春秋 2013年1月号

genre : ニュース, 社会, 国際

 2000年に国連欧州本部の会議場でスピーチされた言葉も、とても印象的で忘れられません。

「難民問題で必要なのは、3つの『リスペクト(尊厳)』です。まず、家を追われて最も貧しい境遇にある人々を守らんとする国々の献身に、尊厳を。次に、各国の協力体制の下で難民に寄り添い、第一線で人道支援に従事する者たちに尊厳を。そして一番大事なのは、難民に対する尊厳です」

UNHCR事務所で机に向かう

 会場の人たちは総立ちになって、拍手を送ったそうです。日本では難民を「助けてあげる」という発想ですが、それは違う。自分の手に負えない原因で不幸な境遇に置かれているのだから、難民の人権は絶対に尊重しなければならない。「それは近代国家の義務ではないですか」と緒方さんは言います。

 国際協力では、その活動のトップの人生観が大切です。10年にわたって務めた国連難民高等弁務官時代には、予算や職員の数を2倍にしました。歴代の国連事務総長はみな緒方さんの人柄に魅せられ、全面的にバックアップしたのです。何せ緒方さんは防弾チョッキを着込み、イラクやサラエボ、ルワンダなどの紛争地帯へ率先して出かけて行くのですから。

国連難民高等弁務官事務所でスケジュール担当官と打ち合わせ中 ©文藝春秋

 01年に森喜朗総理がアフリカを歴訪したとき、緒方さんが同行しました。アフリカへ着くと、難民対策の仕事をしている各国のスタッフが一斉に、「オガタが来た! お帰りなさい」と拍手で迎えたそうです。世界中で人道支援や難民相手に活動する人たちにとって、母親のような存在なのですね。

 2012年2月、我々は日本アカデメイアという組織を立ち上げました。政党や産官学といった枠を超え、日本の将来を担う人材を探して結集させることが目的です。学習院大学の佐々木毅教授が中心で僕を発足人の一人ですが、緒方さんにも加わってもらいました。グローバルな人材を集めようというとき、緒方さんに誘われたら誰も断われませんからね(笑)。

アフガン復興で資金協力へ 基調演説をする緒方貞子氏 ©共同通信社

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