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北乃きい「怒りや悲しみへ気持ちが自然に辿りつくのはすごいこと」

北乃きい(女優)『ウエスト・サイド・ストーリー』――クローズアップ

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 1957年の初演以来、時代も国も超えて愛されてきたブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が、日本キャスト版として上演される。

 11月6日から来年1月13日までの「シーズン1」でヒロイン・マリアを演じるのが、北乃きいさんだ。

北乃きい 撮影:魚住誠一

「台本に書かれていることを、台詞と音楽に乗せて表現すれば必ず素晴らしいものになる。それがアーサー・ローレンツさんの脚本だという演出の方の言葉の意味を、稽古を繰り返す度に実感しています。怒りや悲しみ、そういう感情へ気持ちが自然に辿りつく。それはすごいことだと思います」

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 1950年代、プエルトリコ系移民の流入がニューヨークのマンハッタン区で激増し、社会問題になっていた。

 このウエストサイドの群像劇は、マンハッタンに群立する古びたアパートの谷底から、自由(アメリカ)を夢見るプエルトリコ系と白人系の若者グループの恋愛や対立、そして、人種間の偏見にも光を当てている。

「稽古では、はじめの2週間をテーブルワークに費やしました。当時、偏見からプエルトリコ系移民が殺害されたり、取り締まりの警察官による暴行事件があったそうです。素敵な出会いに憧れていた移民のマリアは、白人系のトニーと魅かれあいながら、少女から大きく成長してゆくのですが、そういう、町の物語を知るほど、マリアに血が通っていくのを感じます」

 さらに、今回注目されるのは、客席が360度回転するIHIステージアラウンド東京での公演。世界初の試みだ。

「若者がたむろする広場、マリアが住むアパート、トニーが働く薬屋。そして決闘の場となる高速の高架下。客席を包み込むように町が再現されているので、私たちと一緒にマンハッタンにいるような感覚を味わえると思います。是非、劇場で楽しんでください」

きたのきい/1991年神奈川県出身。ドラマ、映画、舞台で活躍中。主演映画『戦国ガールと剣道ボーイ』の公開を2020年秋以降に控えている。

INFORMATION

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』
主要人物はWキャスト。マリアはほかに笹本玲奈、トニーは宮野真守、蒼井翔太が演じる
https://www.tbs.co.jp/stagearound/wss360_1/

北乃きい「怒りや悲しみへ気持ちが自然に辿りつくのはすごいこと」

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