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必要なのは自由な発想 SDGs はじめの一歩

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

2019/11/21

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「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を聞いたことはあるだろうか? 貧困や環境、地方創生などさまざまな分野で課題解決を目指す、世界共通の目標だ。実は身近な暮らしのすべてが、SDGsにつながっている。

意思あるトップが課題解決に動いている

「SDGsとは、一言で表せば『未来のかたち』です」。SDGs研究の第一人者である慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授はこう表現する。

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史(かにえ・のりちか)
専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。SDGs策定過程から国連におけるSDGs設定に参画。日本政府SDGs推進本部円卓会議委員などを務める。慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表。
慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史(かにえ・のりちか)
専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。SDGs策定過程から国連におけるSDGs設定に参画。日本政府SDGs推進本部円卓会議委員などを務める。慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表。

 SDGsは2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための行動目標のこと。「誰一人取り残さない」をコンセプトに、貧困の解消や生態系の保護、持続可能な消費と生産などの、国際社会が2030年までに実現すべき17のゴールと、169のターゲットが示されている。

「国連に加盟する全193カ国が賛同したことには非常に大きな意味があります。例えば環境問題では先進国と新興国の対立が生まれましたが、SDGsでは世界の国々が利害を超えて取り組むことを表明したのです。それほどまでに、貧困や飢餓、環境変動などへの危機感は強まっていると言えます」

 SDGsのゴールは環境や経済、雇用、エネルギーなど幅広い分野にまたがる。これらの目標を達成するには、国、自治体、企業、NPOなどすべての人たちによる行動が不可欠だ。今年7月、各国の進捗状況などを共有する国連の会議に出席した蟹江教授は「日本は世界でもトップ10に入るほど意欲旺盛で、いい線をいっていると感じました」と話す。

「特に自治体は熱心です。持続可能性という点で言えば、日本の地方自治体が抱える課題はそのままSDGsのコンセプトに一致しています。定住人口の増加や地域産業の活性化など、それぞれが知恵を絞って地域性豊かな試みを始めており、僕も注目しているところです。経済界でも、日本経済団体連合会が17年に企業行動憲章を改定し、SDGsを盛り込んだことをきっかけに活動が加速しています。自治体や企業のトップから、社会課題の解決に動きだす意思を感じます」

今年9月に国連総会で行ったセミナーの様子。蟹江教授(写真左端)も登壇した。
Photo by IISD/Francis Dejon(enb.iisd.org/sdgs/national-progress/23sep.html)
今年9月に国連総会で行ったセミナーの様子。蟹江教授(写真左端)も登壇した。
Photo by IISD/Francis Dejon(enb.iisd.org/sdgs/national-progress/23sep.html

未来から逆算して行動を考える

 今後、世界中がSDGsの方向に進んでいけば新たな市場が生まれる。そこでいち早く市場を開拓すれば、企業が得られるメリットも大きくなる。持続可能性への取り組みは、倫理的に正しいだけではなく、ビジネスチャンスにもつながるのだ。

「SDGsは人類の普遍的な目標ですが、取り組みが禁欲的である必要はありません。SDGsは、目標を達成するためのアクションを重視します。ゴールからやり方を考えるバックキャスティングの発想が大事なのです」と蟹江教授。

 バックキャスティングとは、今できる行動を積み上げて目標を設定するのではなく、目標から逆算して現在をどう変えればいいかを考える発想法だ。

「例えば『飢餓をゼロに』という目標でいえば、フードロスの半減がターゲットの一つになっています。スーパーで食材の売れ残りを減らす取り組みは当然重要ですが、それだけでは限界があります。そこでオランダでは、売れ残り食材を活用したレストランをオープンし、話題を呼んでいます。調理するのは一流のシェフ。毎日どんな食材が集まるかわからない状況を逆手にとって、そのときにしか出会えない美味しい料理に仕立てるというわけです。これなら、食事を楽しむことがそのままフードロスの削減活動につながっていきます。日本人は真面目に考えてしまいがちですが、SDGsを広げていくには遊び心や、それをビジネスに生かす柔軟な発想が必要なんです」

 日頃からさまざまな経験を重ねてきた人ほど、既存の方法論から離れた発想をするのが難しくなる。状況を変えるのは若い世代だ。

「SDGsという価値観に触れた子供たちからは、ときに大人には考えつかないアイデアが生まれます。指導する立場にある大人は、その可能性を妨げるのではなく、実現に向けてサポートしていってほしい。子供の発想と大人の経験を重ね合わせた先に、きっと新たな道が開けるはずです」

1割の行動を変えれば世界が変わる

“持続可能性”や“環境保全”というキーワードだけを見ると壮大な目標に思えるが、一つひとつのゴールの内容をみるとすぐにできることも多い。例えば環境配慮がされた商品を選択するエシカル(倫理的)消費は大きなトレンドになっており、楽天はサステナブル商品専用のECサイトを開設している。また普段の生活でも、プラスチックごみにつながるレジ袋の利用を控える、ストローを使わない、マイボトルを持ち歩くなど、身近なアクションが増えてきた。

 蟹江教授は「行動を変えるのは『2回に1回』でいい」とアドバイスする。「例えばマイボトルを忘れてしまったら『明日は持ってこよう』と考えれば前向きになれます。大切なのは、完璧さよりも継続。行動のすべてを変えられなくても、“1割”を意識することはできる。小さな変化ですが、世界の77億人が“1割”を変えれば、それが未来を変える大きな流れになっていきます」

自治体、企業、市民みんなで目指すSDGsの17のゴール

SDGs(持続可能な開発目標)とは……

SDGsは、2001年に設定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後を継ぐ新たな行動計画のこと。2015年9月の国連サミットで採択されており、MDGsで達成できなかった課題や、国際社会が一致して取り組むべき課題を目標としている。17の目標で構成している。一つ一つのゴールは相互に関係し合っており、全体でみることが必要だ。

text:Emi Morishige(Embody) design:Takayoshi Ogura

出典元

安倍晋三「桜を見る会」「虚偽答弁」を許すな

2019年11月28日号

2019年11月21日 発売

定価440円(税込)