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市民・企業・行政がひとつの輪となって未来をデザインするSDGs未来都市 北九州市

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全国の自治体がSDGsへの取り組みを掲げるなか、注目を集めているのが北九州市。昨年「SDGs未来都市」に選定された、その背景には長年環境問題と向き合ってきた歴史がある。

SDGsの先進都市として日本を牽引する。

「今から56年前、5市が合併して新たに北九州市が誕生しました。その当時、北九州は日本の高度経済成長を牽引する一大工業地帯で、大気汚染や水質汚濁といった公害が深刻な問題となっていたんです」。北九州市企画調整局SDGs推進室次長の上田ゆかりさんは、まちの歴史を振り返る。「そこで立ち上がったのが市民、それも婦人会の女性のみなさんでした。『青空がほしい』をスローガンに公害撲滅の運動の輪が広がっていったんです」。その運動はやがて企業・大学・行政などが一丸となった取り組みに発展し、ついに公害を克服。その経験を糧に、北九州市は環境に配慮した「循環型社会づくり」に取り組むようになる。「1997年からは環境保全と産業振興の両立をめざした『北九州エコタウン事業』がはじまり、2008年には『環境モデル都市』、2011年には『環境未来都市』に選定されました。そういった長年にわたる“環境”への取り組み、その延長線上にSDGsがあったんです」。

北九州市SDGs推進室次長の上田ゆかりさん
北九州市SDGs推進室次長の上田ゆかりさん

 2015年、国連サミットで採択されたSDGs。それに先行するかたちで、北九州市は独自の取り組みを進めていた。それが、2017年の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞受賞、2018年の経済協力開発機構(OECD)によるアジア初の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」認定、さらに国による「SDGs未来都市」選定へとつながっていったのだ。まさに北九州市は、日本におけるSDGsの先駆的存在というわけだ。

2018年7月、北九州市長は国連の「地方・地域政府フォーラム」でSDGsへの取り組みを発表した
2018年7月、北九州市長は国連の「地方・地域政府フォーラム」でSDGsへの取り組みを発表した

 SDGsをさらに推進するために、北九州市が積極的に取り組んでいる分野がある。一つは「環境国際ビジネス」だ。「北九州市はこれまでも国際協力として、公害克服を通じて蓄積してきた技術やノウハウをアジアの国々に提供してきました。それをボランティアではなく、ビジネスとしてwin・winのかたちに構築していこうというものです」。そう説明してくれるのは、北九州市環境局アジア低炭素化センター事業化支援担当課長の村上恵美子さんだ。「アジア各国では“環境の北九州”というイメージが定着しています。そこで、廃棄物処理やリサイクルなど、環境に関する様々な相談がこのアジア低炭素化センターに持ち込まれてくるんです。それを海外での環境ビジネスを考えている地元企業にマッチングする。いわば仲介役です」。2010年の開設以来、アジア低炭素化センターが手がけたプロジェクトは、16カ国・地域の78都市で192に上る。

プノンペンでの廃棄物管理改善事業。最終処分場運営に関する技術指導を実施。
プノンペンでの廃棄物管理改善事業。最終処分場運営に関する技術指導を実施。

 もう一つの取り組みが、「次世代エネルギーの拠点化」だ。北九州市港湾空港局エネルギー産業拠点化推進課課長の須山孝行さんに聞いた。「現在、海域調査などを行っていますが、2022年度には、ひびきウインドエナジー(株)が、響灘洋上に複数の風車を設置する大規模洋上ウインドファームの建設に着工する予定です。さらに、響灘地区には充実した港湾インフラと広い産業用地があります。今後、国内をはじめアジアで洋上風力発電が普及することを見据え、風車の部品・資材搬入や保管、組立て、積み出しなど、各地の洋上ウインドファームに向けたサービスを提供する風力発電関連産業の総合拠点の形成をめざして、取り組みを進めています」。SDGsが掲げる「環境」「社会」「経済」3つの統合。北九州市はその実現をめざす。

風力発電関連産業の総合拠点化について説明する須山孝行課長。
風力発電関連産業の総合拠点化について説明する須山孝行課長。
響灘の海岸沿いに立つ風力発電施設。この沖合に洋上ウインドファームが建設される。
響灘の海岸沿いに立つ風力発電施設。この沖合に洋上ウインドファームが建設される。

「市民の力」がSDGsを推し進める。

 北九州市でのSDGsの取り組みは行政主導ばかりではない。たとえば小倉の中心部にある商店街「魚町銀天街」。

魚町銀天街のエコルーフ。2010年に設置された。
魚町銀天街のエコルーフ。2010年に設置された。

 この商店街は昨年8月、日本初の「SDGs商店街」を宣言した。仕掛け人のSDGs Art Project 代表・森川妙さんに聞いた。「世界の目標であるSDGsを、自分事として捉えてもらう難しさを感じていました。SDGsの達成には、日々の生活での積み重ねが重要だと知ってもらいたかったんです。どのように発信したら良いのかとぼんやり考えていたとき、たまたま目にとまったのが魚町銀天街のエコルーフでした」。ソーラーシステムでアーケードの照明をまかなっているという。「あっ、これってSDGsだ」。調べてみると、フードロスの解消やフェアトレードなど、商店街の中でそういった事例がいくつも出てきた。森川さんは組合に掛け合い、SDGs商店街としてアピールすることを提案、商店街あげての「宣言」に至ったのだ。

魚町銀天街に立つ森川妙さん。森川さんは商店街の中にある北九州ESD協議会のコーディネーターも務める。
魚町銀天街に立つ森川妙さん。森川さんは商店街の中にある北九州ESD協議会のコーディネーターも務める。

 気がつかないうちにSDGs。それは小倉織物製造の若き女性社長・築城(ついき)弥央さんも同様だ。江戸時代から武士の袴や帯として織られてきた「小倉織」。その伝統は昭和初期に途絶えてしまったが、1984年、弥央さんの伯母にあたる染織家・築城則子さんにより復元、再生された。「新たに機械織の小倉織を開発し、バッグやクッションなどクラフト製品を手がけてきたのですが、地元には織物工場が一軒もない。それなら自分たちで工場を持とうと、昨年、小倉織物製造を立ち上げたんです」。伝統や技術を途絶えさせないために何をすべきか。それもSDGsにつながる。「小倉織はもともと丈夫な生地です。使い捨てではなく、経年変化を楽しんでもらいたい。気に入ったものを長く使う。ものを粗末にしない。そういう日本の伝統的な考え方こそ、SDGsなのかもしれませんね」と弥央さんは言う。普段の、何気ない取り組みが、SDGsの17のゴールへと続いている。北九州市を訪ねて、そのことに気づかされた。

新しい小倉織として誕生したブランド「小倉 縞縞」の商品。たて縞が美しい。
新しい小倉織として誕生したブランド「小倉 縞縞」の商品。たて縞が美しい。
小倉織物製造社長の築城弥央さん
小倉織物製造社長の築城弥央さん

提供:北九州市

photograph:Shiro Miyake

出典元

安倍晋三「桜を見る会」「虚偽答弁」を許すな

2019年11月28日号

2019年11月21日 発売

定価440円(税込)