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2019/11/14

source : 週刊文春デジタル

genre : ビジネス, テクノロジー, 社会, メディア, 国際

 動画の加工は写真よりも大変だったが、これもAIが助けてくれるようになった。動画内の登場人物の顔だけを別人のものに変えるようなソフトも登場しているからだ。このような、AIを使った手の込んだ加工を「ディープフェイク」などと呼ぶようになっている。

 現状ディープフェイクで目立つのはポルノだ。アダルトビデオの女優の顔を有名人の顔に変えた映像はいくつも流通している。そのほとんどは「ディープフェイク」とは言い難い粗雑なコラージュだが、なかには驚くような出来のものもある。高性能なパソコンといくらかの知識が必要にはなるが、オンラインで流通しているソフトを使うと、誰でもディープフェイク動画は作れる。

 また9月には、中国で「Zao」というスマホアプリが流行った。これは、俳優の顔と自分の顔を入れ替えることができるディープフェイクアプリ。例えばあるゲーム開発者が「レオナルド・ディカプリオの出演シーンを、すべて自分の顔に入れ替えた」動画を投稿し、SNS上で話題になった。ただしこのアプリは中国でのみ公開されたもので、他国では使えない。しかも、著作権上の問題や、個人の顔写真収集に関わるプライバシー問題も指摘された。

中国のディープフェイクアプリ「Zao」で、レオナルド・ディカプリオの出演シーンを別人の顔に入れ替えた動画

 実のところ、単に人をだますなら、コラージュやディープフェイク画像に頼る必要すらない。それらしい写真をどこかからもってきてSNSに貼り付け、別の説明をつけて流せばいいのだ。2016年には、熊本地震の直後に「熊本の動物園からライオンが逃げた」というデマ情報をTwitterに投稿した会社員が逮捕された。そのライオンの写真は南アフリカで撮影したものだったが、人々は写真をよく見ず、ツイートの内容を信じてしまった。

 写真や動画の加工は簡単になり、それをどこから拾ってきて勝手な文脈を付け加えてデマを流すのも、同様に簡単なことになっている。これは、「事実を伝える」上では深刻な事態だ。