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2019/11/14

source : 週刊文春デジタル

genre : ビジネス, テクノロジー, 社会, メディア, 国際

 アドビは「クリエイティブクラウド」というクラウドサービスをもっているが、それとツールを連携させることで、編集後にデータを作った段階で「内容証明情報」を作り、それを写真投稿時に使う、という手段を採ることになる。この内容証明情報は「改ざんできないようにする必要がある」(ラオ氏)ので、暗号化技術などによって守られる。

 写真の真贋を証明するのでなく、写真がなにで加工されたかだけを示す、というのは、フェイク対策としては直接的なものでないようにも思える。そうしている理由は、「コンテンツの中身に対し、アドビは中立でいたい」(ラオ氏)からだ。加工するのは悪いことではない。そこからクリエイティブな作品が出てくることもある。なにひとつ編集されていない、事実を伝える写真も重要だ。それらは「どちらも重要」なのであり、どういう意味を持つかを判断するのは人間側の役目だ、という主張なのである。

 また、単なる改ざん防止だけでなく、写真の著作権者をはっきりさせる役割も持っている。ラオ氏は「ニューヨークタイムズが興味を持ったのは、特にその要素があるからだ」という。写真やイラストの盗用は、日本でも深刻な問題になっている。そうした状況に変化を加えるためにも、この技術は重要なものだ。

プーチン大統領のオリジナル動画(写真左)に、ドナルド・トランプ米大統領の姿を重ねたディープフェイク動画 ©時事通信社

 アドビはこの技術を「自社だけのものにするつもりはない」という。オープンな技術として公開し、色々な企業がソフトやサービスに組み込めるようにすることを目指す。Twitterやニューヨークタイムズは第一弾、という扱いだ。

 その性質上、システムの利用にはクラウドサービスとの連携が必要だが、「すでに大手クラウドサービスとは話し合いを進めており、彼らも関心を持ち、ともに作業を進めている」(ラオ氏)という。

 日本での展開はまだ予定がない。しかし、日本でも有用な技術であることは疑いがない。特に筆者が重要だと思うのは、ニューヨークタイムズのようなメディアだけでなく、SNSであるTwitterも賛同している点だ。個人が撮影した写真でも、情報としての価値は変わりない。撮影者や制作者を担保する仕組みが組み込まれることは、誰にとってもプラスだ。もちろん、情報を埋め込まずに投稿することもできるが、それは「一定以上の信頼が置けないもの」と判断される時代が来るだろう。

 記者からは「こうした技術は、2020年の大統領選挙にも有用では?」という質問が飛んだ。だが、アドビ側は苦笑してひとことこう答えた。

「まだ開発には時間がかかる」

 2020年に導入できればプラスだが、事を拙速に進めるつもりはないようだ。

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