「私的な秘密の領域」か、あるいは「強姦人形」か――。こんな議論が、韓国でしばらくメディアをにぎわせ続けている。俎上に載せられているのは、ほかでもないダッチワイフ。日本ではラブドール、また英語圏ではsex dollとも呼ばれるが、韓国では一般に「リアルドール」という。呼び名の通りリアルに造形された高級ダッチワイフが、女性問題として最高裁から大統領官邸まで巻き込む論争を引き起こしているのだ。
きっかけは、2017年に遡る。ソウルのアダルトグッズ店ブルル・ドット・コムが海外から取り寄せたダッチワイフ1体がこの年、仁川税関で通関保留となった。輸入元は日本、価格は84万7000円だという。
韓国はもともと、少なくとも建前上は性の風紀に厳しい国だ。ダッチワイフも税関で「風俗を害する物品」と見なされ、輸出入が事実上禁止されていた。国内には一定数のダッチワイフが流通しているが、それらは韓国製か、税関の目を逃れた「密輸品」ということになる。
一方ブルル・ドット・コムは、2008年にディルド、また2010年には日本のオナホール=テンガの輸入禁止を不服として裁判で争い、許可を勝ち取った実績の持ち主。ダッチワイフを巡っても「個人の性的自己決定権の行使を阻害している」として、税関を相手に行政訴訟を起こした。
1審はダッチワイフが「人の尊厳と価値を深刻に毀損する」などとされ、敗訴。ところが2審はこれを覆して「私的な秘密の領域に対する国家の介入は最小限にすべき」との判断が下された。今年6月の最高裁判決もこれを踏襲し、2審判決が確定した。
禁止の呼びかけに大統領官邸が回答
「最高裁がリアルドールの合法化認める」――。このニュースはメディアで大きく取り上げられたが、待ったをかけたのが女性たちだ。