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連載近田春夫の考えるヒット

指原莉乃の歌詞世界にあった“謎” これは確信犯なのか?――近田春夫の考えるヒット

2019/11/30

『ズルいよ ズルいね』(=LOVE)/『sunny』(風男塾/ふだんじゅく)

絵=安斎 肇

『ズルいよ ズルいね』というタイトルにはつい好奇心をそそられた。どんな内容なのか、なんだか知りたくなってしまうものがあるのだ。ちなみに作詞は指原莉乃である。

 早速歌詞カードを見てみたかったが、その前に先ず楽曲としてのトータルな感想だ。

 例によってiPhoneのスピーカーでチェックを始めると、jpop歌唱の御多分に漏れず、この度も、聴き取れる歌詞は三割強といったところか?

 それにしても近頃とみに実感するのが、いわゆる“職業作家”と呼ばれる人たちの、お仕事ぶりのお行儀の良さだ。

 この作/編曲にしても、たしかによくまとまっていることはよくまとまっているのだけれど、枠からはみ出そうとか、羽目を外そうとかするようなところが一切ないというか、いかにも“今どきのアイドルが歌う歌”然としたつくりに終始した手堅さが、なにより強い印象として残る。

ズルいよ ズルいね/=LOVE(Sony Music)作詞:指原莉乃、作曲:長沢知亜紀、永野小織。代々木アニメーション学院とのコラボアイドル。

 最近ときおり耳にする「同調圧力」てぇヤツが働いているからなんすかねェ……そこは私にはよく分からないけど。職業作曲家には「個性」など求めぬのが、時代の趨勢なのやも知れませぬな。エントロピーは結構増大しているかもよ(飛躍し過ぎですかね?)。なんにせよだ。この曲書いたヤツって何者なんだろうって興味は、もう少し持たせてもらいたかったね、正直な話。

 さて、歌詞の内容だが、要は、通学路が共通ということがきっかけで仲良くなった相手との、別れの物語である。何故二人の関係は破綻したのか。具体的記述はない。だがきっと、主人公には納得のいかぬものがあったに違いない。それ故に“ズルいよ”や“ズルいね”が連発されるのだと踏んだのだが、第三者的に文脈を捉えれば、肉体もとい!“恋愛関係”アリ、ののちに捨てられた、と解釈するのが妥当かとも思われる。

 ところでこの歌詞。実は最初は主人公の性別がよく掴めなかった。というのも、ここには一人称の代名詞はなく、登場するのは“君”だけで、しかも ♪「君は綺麗だった」などといった箇所もある。師匠筋の秋元康も一人称は僕だったりするし……。その伝で、主人公は男子なのかいなと? しかし、男が“やり逃げ”されちゃうお話は、いくら何でも我が国ではまだ時期尚早だろう。共感はなかなか得難い。

 何度か歌詞を読み直し、やっと分かりましたよ! いや単に額面通りでした。すなわち君(男)は綺麗だった、と。

 今回の主人公、男の何に一番未練が残ったかといえば、結局“みてくれの美しさ”だった訳で、いやぁ、このような設定は、少なくともjpop/歌謡曲の歴史のなかでも、前代未聞なんじゃないの?

 重要なのは、それが彼女の無意識の産物だったか、戦略的確信犯的作業の賜物だったかだ。私は後者と断定するだけの根拠を歌詞中に見出すものであるが、紙幅が尽きた。説明はまた今度するネ(笑)。

sunny/風男塾(ふだんじゅく)(テイチク)作詞:はなわ、作曲:樋口太陽。はなわがプロデュースする男装アイドルユニット。

 風男塾。

 膝小僧がテーマということでは、こちらも前代未聞だね。

今週の“顔面相似形”キャンペーン「これは結構自信があるんだけど、元オリンピック体操選手の池谷幸雄と、元経産省の官僚で現経済評論家の細川昌彦! ネットで検索するとそっくりの顔写真がゾロゾロっとでてくるからさ。みなさん納得していただけるかと」と近田春夫氏。「ことしの編集部募集の顔についても、ちょっとした腹案がオレにもあるよ!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

出典元

安倍晋三「桜を見る会」「虚偽答弁」を許すな

2019年11月28日号

2019年11月21日 発売

定価440円(税込)

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